DVD/SACD Player Pioneer DV-S747  の改造 May 2007.

※ 注意 ※ 

改造という行為によりメーカーの保証や製造責任が失われます。意味のわからない方は改造などに手を出してはいけません。
改造にはリスクが伴います。そのリスクを理解した上で行動して下さい。
万が一、失敗したとしても誰のせいでもありません、改造した本人に全ての責任がありますので覚悟して下さい。
(決して情報元のサイトや私にクレームなど出さないように(^^;)


Pioneer DV-S747

DV-S5の改造に味をしめて、今度はSACDも再生可能なDV-S747に手を出しました。
DVDやCDは勿論のこと、それこそMP3やCD-RWも対応し、
再生出来ない12cmメディアは殆ど無いフルコンパチプレイヤーで、レガート リンク コンバージョン・PRO搭載と言うことだそうです。

何でも再生可能な本機のDACはシーラスロジックのCS4392と言う、いわゆるフィリップス系のDACチップで、24bit/192KHzのPCMとDSDに対応した2chの出力を持っています。
DV-S747
では3個のCS4392を使い、5.1chをも出力出来る様になっています。しかもCDやDVDの16bit、20bitのデジタル信号は176.4kHz、192kHzまでアップサンプリング処理し、24bitへ再量子化してからDACにて変換されるそうな(フロント2ch)。
ただの4倍オーバーサンプリング24bitデジフィルと同じ事を言葉を換えただけに思うのだが?なにがPROなのかサッパリわからんです(^^;

しかし無改造のその音質はとりあえずSACDのフォーマットによる良さは判るものの、半導体臭いというか、オペアンプ的と言うべきか、いわゆる硬質で聴き疲れする音です。(長時間の聴取には我慢出来ない(>_<)
そのままでも高解像でなめらかな質感でSACD音源の品位の高さを伺わせるのですが、いかんせん内蔵のバッファーは表面実装の汎用オペアンプ5532DDで、しかも単一電源(+10V)による動作です。

とりあえず表面実装は時代の流れとして受け入れましょう。
アナログ出力にC結合が前提ならばオペアンプの単電源動作はローコストでスマートな使い方に見えますが、やっぱりケチ臭い! 
かと言って、直結±2電源動作になっていたとしてもオペアンプ5532DDでは大した違いは無いでしょうけどね...。



先ずは分解。基板間コネクタを外すのが結構難しい。表面実装部品やコネクタ自身を痛めないように慎重にやるべし。

CS4392も電圧出力なのでI/V変換の必要が無く、DV-S5の時と同様にアナログ出力の後はオペアンプ(前出の5532DD)でバッファー兼アクティブフィルターが組まれています。
DACの電圧出力はデータシートによるとP−Pで電源電圧の0.96倍ですので5V電源動作からは約 4.8Vp−p ≒ 1.7Vrms の出力電圧が取れることになります(実測1.69V)。もちろんオフセット電圧は電源電圧の半分(約2.5V)が出てしまうので通常はコンデンサでDCカットする必要があります。

と、此処まではDV-S5の時とあまり違わないのですが、CS4392は差動出力なので片チャンネルに正と負の出力があり、これを生かさない手はありません。DV-S5では2SK79によるソースフォロワー出力段の追加だけでしたが、今度は2SK79のソースフォロワーを2つ並べて差動(平衡)出力とし、これにパーマロイコアのライン・トランス 旧TANGO NN-600-600 をブリッジ接続してトランスによる平衡・不平衡変換としました。これでDCとのアイソレーションも出来るので、カップリングコンデンサは不要で将来バランス伝送にすることも容易です。

しかし、パーマロイコアは僅かな直流磁化も嫌うので、DC-Balance調整のために10KΩのVRを追加して、両ソース間の電圧がゼロ(1mV以下)になるように調整しています。
さて、K79やソース抵抗を選別して揃ったもの同士をペアとしているにもかかわらず充分で無いのは、CS4392の差動出力の+側と−側にも僅かながらDCレベルのバラツキが在るためで、弱冠の直流がNN-600-600 の1次巻線に流れてしまいます。
当初は無視していたのですが、テストCDとオシロで確認したところ、L−ch側の4Hzと8Hzの0dB出力波形で歪みが確認されたので、トリミングが必要と判断したわけです。もちろん調整後は両chとも目に見える歪みは皆無です。



ソースフォロワーのバッファー基板。ハンダ面から部品を差し込みパターンの無い部品面で配線する上條さんに倣った手法。
ソース抵抗は1Kの手持ちがなかった為、2Kと2.2Kのパラ。回路図には書かなかったが、基板上のOS-CONは-5Vのデカップリング。
この時点では未だ実装していないが、10KΩ
トリマーは基板の裏側に取り付けた。

問題がひとつ在りました。
ソースフォロワーが受けるDACの信号電圧が0〜5V p−pの範囲なので、ドレイン側には倍の10V程度、ソース側には−5V程度の電圧を供給したいところです。前回のDV-S5ではオペアンプ回路がちゃんと±8Vの2電源だったのでそのまま利用することが出来、何も問題はなかったのですが、DV-S747では+10Vだけでオペアンプが賄われていて、使えそうな負電源が存在しません。

仕方がないので、5V電源ユニットを追加内蔵しようかと考えながらその取り付け場所を探しているうちに「もしかするとそんな手間よりも電源基板を改造する方が簡単ではないか?」と思い始めました。
電源基板を睨みつけていたら...白状しました(んなわきゃ無いですけど...(^^;)。

見てみるとスイッチング電源の出力は3.3Vと5V、さらに12Vに27V(だったと思う)が出ていますが、ぜ〜んぶ正電源でどこにも負電源が見あたりません。しかしながら、幸いにもブラックボックスではない基板上に組まれたスイッチング電源なので整流回路とそのカラクリが見えます。通常のスイッチング電源の例に漏れず、2次側は半波整流なので+5Vを供給している整流回路部分にダイオード(ファーストリカバリー・タイプが必須)1本、電解コンデンサ2本、フェライトビーズ1個、−5Vレギュレーター(79005S)1個を基板の空きスペースに穴をあけて載せました。供給する電流は35mA程度でしかないので、もっと容量の小さな79Mとか79Lで充分なのですが、手持ちがこれしかなかったので1Aタイプになってしまいました。(値段は高くないので一向に構いません(^^;)

電源基板とにらめっこ。


追加した-5V電源回路と電源基板の空きスペースになんとか追加実装した−5VレギュレーターICとコンデンサ。


カップリングコンデンサを外して代わりにフェライトビーズと抵抗を取り付け、これがバッファー基板の入出力になる。
斜めになったコンデンサから引き出しているのはオペアンプ用+10V電源。これをK79のドレインに供給。


改造した基板を取り付け、ドライブを組み付けたところ。


リヤパネルを取り付け、トランスを組み込んだ様子。


音質は? 当然ですが、「安心して音楽が楽しめるようになりました」と言っておきます。 ムフフ...

DV−S747は2001年の発売当初¥99,800と決して安くはありませんでしたが、フルコンパチ・プレイヤーの草分けとして相応の価格だったのでしょう。マランツ等の他のメーカーでも同じDACを使用していますので、やはりアナログ回路が肝です。


■ SACDへの誘い

何時の間にやら手元にはCD/SACDハイブリッドになったディスクが1枚、2枚、3枚と増えていき、せっかくタダ?で付いてきたSACD層の音を確かめたくなってきたのです。CDの音質も改善されたとは言え、現在でも多くのマニアが相変わらずターンテーブルを回し、アナログディスク再生に決別出来ていないのは、やはりCDの音質が不充分であることに他なりません。CDP改造やDACの製作をしてきた自分にとってもアナログディスクレベルの音質をCDで実現することが目標だったわけですが、近づいたとしても半歩及ばず、決してアナログディスクを越えたとは思えませんでした。(当然ソースの録音からカッティングに至るまでそれぞれのシーンでのクオリティに依存しますのでダメなアナログディスクも多いですが...。)

SACDがこの世に出てから随分と経ちますが、CDだってその音が良くなったと漸く実感出来たのはVictorが20bitK2マスタリングをやり始めた95年以降です。
もちろんそれ以前にも良い録音のCDは存在しましたが、これ以降はアナログマスターからデジタルマスターに変換する時のフォーマットがそれまでの16bitから20bitへ、さらに24bit又は1bitのDSD方式等に変わって行き、明らかに各メーカーともにクオリティの向上が見られました。それは再生側のD/A 変換やオーバーサンプリングではなく、録音側のA/D変換やマスタリングの技術も長足の進歩を遂げたからこそで、16bit/44.1KHzのフォーマットでは既に多くの問題を抱えており、マスター音源としてはクオリティ不足と認知されていたからに他なりません。
音楽ソースのクオリティ向上の口火を切ったVictorには感謝したいと思います。

そんなデジタル技術革新の中で、もはやCDのフォーマットではハイエンドのアナログディスク再生を越える事は出来ないと、技術者だけでなく耳の肥えた人達は感じたことでしょう。16bit/44.1KHzのフォーマットは必要充分なクオリティを確保出来たかも知れませんが、全てに置いてアナログを凌駕出来たとは言えないのです。(もちろんそれ以前に録音ソースの質が問われます) 同じ音源(優秀な録音の)で比べるとアナログでの密度感や空気感がCDからは出て来ないのです。個人的な意見ですが、根本的にPCMと言うエンコード方式は連続的に変化する音楽信号のデジタル変換にはベストな方式ではないのでしょう。PCMではA/D変換でもD/A変換でも丸め誤差やデシメーションフィルターによる間引きが必ずついて回るし、それ故に基本クロックの品質(ジッター)も問題になる。そんなジレンマから解放してくれるのがSACDのDSDと呼ばれるPWMであり、高速標本化技術の進歩によって音声帯域での実用が可能になった方式です。こうしてSACDがこの世に送り出されましたが、1bitというとマルチビット方式よりも低コストの為の技術と捉えられがちで、果たしてそれが本当に良いものなのかどうかにわかには理解されないのが現実かも知れません。かく言う私もマルチビット時代に出た1bit D/A変換器には疑問の目を向けていました。でもハッキリしているのはPWMでのD/A変換はローパスフィルターだけで成立してしまう程にシンプルでPCMよりも音楽信号に優しいデジタル標本化技術であると言えると思います。

せっかく登場したSACDですが、今度はそれらを必要とする人が果たしてどれだけいるのかがハードもソフトをも含めて普及へのハードルだった事でしょう。そもそも最初からハイエンドユーザーしか興味を持たないと思われたし、商品的な戦略からしても低価格でポンポン出せるはずが有りません。ですから、普及するまでには時間がかるし、マニア以外の一般の人達にとっては不必要なオーバークオリティと目されるSACDはかつてのエルカセットと同じ運命をたどるのでは?と、そんな懸念を誰もが頭の中で思い描いたことでしょう。さらにはデジタルコピーが出来ないことも敬遠される一因です。しかし、見た目に同じ12cmの光ディスクというメディアはハードウェアに互換性を持たせることが比較的容易で、SACDに限らず各種フォーマットにコンパチビリティを持たせたドライブが割とすぐに実現出来たのは嬉しい誤算かも知れません。このコンパチビリティこそがかつてのエルカセットと大きく違うポイントですし、CDとSACDのハイブリッドが可能というメディア形態も普及のために必要な手段だったのでしょう。12cm光学式ディスクはさらに大容量化されていますが、レーザーピックアップの劣化等のドライブの信頼性が今後どうなるのか弱冠の懸念はあります。

例え、オーディオマニアの再生環境だとしてもシステムのトータルなクオリティが充分に高くなければSACDの良さが発揮されない可能性はあります。もちろんSACDソースのクオリティがプアでは話になりませんが、昨今ではMP3等の圧縮フォーマットやネット配信でも好音質再生が多くなりましたので、なおさら記録フォーマット以外の部分での影響を意識せざるを得ないのです。

そういった理由からだと思いますが、現行のCDフォーマット(16bit/44.1KHz)で充分と言い切ってしまう人達もいます。そういう人達は運悪くハードソフト共に充分なクオリティのSACDの音を経験していないか、プアな再生装置しかない為に違いが判別出来ないかのどちらかでしょう。

1999年のSACD規格制定から自前のシステムでSACDを再生出来るようになるまで既に8年が経過していますが、やはりCDフォーマットでは”アレが限界なんだ”と思えるほどにSACDがもたらしてくれる表現力は素晴らしいの一言です。同じ音源の入ったCD/SACDハイブリッド版で聞き比べると高域の解像度がまるで違います。シンバル一つとってもCDではモノトーンな感じがしますが、SACDでは4重の和音に聞こえるし、その陰影や空気感が伝わります。これはやはりCDでは表現されなかった部分で私的にアナログディスク再生でしか感じ得なかった領域だし、逆にSACDは漸くアナログ再生システムを凌駕しうるデジタル機器とさえ思えるのです。(もちろん録音ソースのクオリティに依存しますが(^^;)
そしてSACDによる次元の違う高音質を自分のシステムで再生出来ている事に安堵すると共にCDフォーマットの限界を垣間見てしまったのです。

やはり16bit/44.1KHzのCDフォーマットが音楽再生には不充分であったと改めて思いを強くしたと同時に、今後全ての音源がCD/SACDハイブリッドで提供されることを願いたいものです。

SACDのサンプリング周波数は2822.4KHzで、これはCDフォーマットである16bit/44.1KHzの単位時間あたりのデータ量のちょうど4倍にあたります。24bit/96KHzを1ビット換算しても2304KHzですからかなりの量であることが判ります。
PCM方式とPWM方式でどちらが優れているのか明確な結論は出ていませんが、可聴帯域での時間軸の分解能を考えると44.1KHzサンプリングのPCMでは10KHzで4値、それが1KHzでもたかだか44値の分解能しかないのですが、SACDのPWM(DSD)なら1KHzでも2822値となり16bit相当の振幅分解能(ダイナミックレンジ)を持たせても、176値の時間分解能に相当します。

PCMではエンコーディング(A/D変換)やデコーディング(D/A変換)時に必ず丸め誤差が生じますが、PWMでは高域になるに従ってノイズが増えるというだけで、基本的にPCMの様な間引きや丸め誤差による情報欠落や弊害は起きないし、サンプリング周波数が高ければ高いほどノイズも高域に持っていけるのでアナログフィルターも簡素化出来るという利点があります。そしてなによりもPWMではパルスの密度(濃淡)で記録されるということがモネやルノワールの点画のようにアナログとの距離が近いのです。

ひとつ思い出して戴きたい、かつてのテープレコーダーだ。過去のマスターはアナログテープによる記録であり、現在でも一部の録音現場で使われ続けています。テープレコーダーはアナログ信号を磁気ヘッドにかけて磁性体をコーティングされたテープに記録しますが、実はこの行為が非常にPWMと似ています。テープレコーダーでは高周波バイアス方式が採られ、数十KHzの高周波に音声信号を載せて記録していたのです。これはSACDの2822.4KHzというサンプリングクロックが高周波バイアスに相当するし、パルスの密度はテープに記録された磁束密度に相当します。

もう一つ、FMラジオはどうでしょう。これも搬送波に周波数変調をかけている、従って振幅は一定です。クロックが搬送波に相当し、音声信号が搬送波の粗密で現されるしくみです。SACDのDSD(PWM)信号はこのようにキャリアとなる高周波やクロックがあってそこに信号を密度変調するアナログ記録や伝送に非常に近いやり方と言えます。ですから、マスターテープのクオリティをエンドユーザーまで配布できるのはアナログに近いPWM(DSD)方式なのです。

現実にSACDの音質の良さを実感して、色々考えていくうちに僅かながらも長年に渡りどうにか保たれていたアナログディスク再生への執着(未練?)みたいなものはすっかり冷めてしまいました。
内周に行くに従ってS/Nが劣化するアナログディスクに比べSACDのS/Nの良さはアナログディスクの比ではありませんし、アナログではかなりの物量を投入しないと得られないと思われる音質をSACDではこの程度の改造であっさり得られてしまう...否、凌駕しているのです。
ある意味儀式にも似たアナログディスク取り扱いの煩雑さの事を思うと、それらにかけられるコストはSACDソフト収集に向けた方が得策だと思えるようになりました。もう中古のLPコーナーを覗く必要もありません。

 

最後に声を大にして言いたい。

一部では既に進行しているが、これから行われる新しい録音も古い音源のリマスタリングもDSD(又は上位のPWM)にして、PCMは止めるべきと。

そしてSACDはデジタルコピー出来ない分もっと安価にして音楽ファンがもっと買いやすくなるように業界全体が普及に努力してもらいたい。


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Last update 02-Jan-2008