7球 Line-Control Amp Since June 2010.

 

CD等のデジタル音源が主流になってからというもの、RIAAイコライザーを搭載したいわゆるプリ・アンプやコントロール・アンプが無くても音量調整さえ出来ればパワー・アンプだけでも音楽鑑賞には困らなくなりました。

それ故にアンプを内蔵しない(ゲインを有しない)パッシブタイプの【セレクター+アッテネーター】を使っている人も多いと思います。
かく云う自分もそのうちの一人であり、過去に使っていたコントロール・アンプでは明らかに音質劣化を感じた故に、長い年月に渡り自作の【セレクター+アッテネーター】を愛用していました。
しかしながら、通過するアッテネーターによっては(特に普通の可変抵抗)周波数特性の変化や音質劣化が生じます。
【セレクター+アッテネーター】の場合、ソースからアンプまでの送り出し経路としてはシンプルに出来ますが、決して完璧ではありません。

ソース機器の出力インピーダンスが充分に低ければ(概ね2KΩ以下)音質劣化の度合いは低いと考えていたのですが、やはり一般的な100KΩのVRを通過すると確実に劣化していることが実験で判ってしまいます。しかし、これにずっと抵抗値の低い1KΩのVRを使った場合は殆ど劣化しないことも判り、これでOKと云いたいところですが、今度はソースとなるCDP等の機器が1KΩの負荷に は耐えられずに出力電圧が低下します。
従って殆どのソース機器では負荷となる次段の入力インピーダンスが10KΩ以上でないと出力電圧だけでなく、その他の本来あるべき所定の性能が発揮できない可能性があるし、下手 をすると故障を招く可能性もあり得ます。

※イコライザーを持たない構成のプリ(ライン)・アンプも存在し、それらの定義が明確でもないので、
  ここでは”パワー・アンプをドライブする為のゲインを有する機器”としてコントロール・アンプとしておきます。
  (かつてLUX等はコントロール・センター等と称していました)
  そしてイコライザーを持たない構成はライン・コントロール・アンプと呼ぶのが適当だと思います。

以前から某有名掲示板では差動プリの話題で盛り上がっていましたし、その後有志の方々より基盤が配布される等、ライン・コントロール・アンプの優位性や認知度は上がってきているようです。

もちろん、過去からプリ(ライン)・アンプ優位説を唱える人はいましたが、複雑な機能を持ったプリ(ライン)・アンプ、特にトーン・コントロールが劣化を招く事は既に認知されていたので、アンチ・プリ・アンプ派が増えたのも自然の成り行きでしょう。


■ コントロールアンプの条件

コントロールアンプに求められる機能(性能)とは

・適度な入力インピーダンス
・低い出力インピーダンス
・ソースを切り換える入力セレクター
・音量調整
・適度なゲイン
・低歪率・低ノイズ
・音質劣化の無いこと
・その他

過去入力インピーダンスはなるべく高い方が良い?と思われがちで、真空管全盛期の時代では500K〜1MΩが普通でしたが、測定器ならいざ知らず、浮遊容量やノイズの影響等を考えるとオーディオアンプでは安易な高入力インピーダンスは却って不利易になるので現在の主流は50〜100KΩです。
私個人的には10KΩでも良いと思いますが、そのためには全てのソース機器の出力インピーダンスが1KΩ以下である必要があるので、そうは簡単にいかないのが現実です。


 ■ 回路図(暫定)

上記の条件を可能な限り満たすべく、回路構成は初段差動1段増幅 &全段プッシュ・プル構成として低歪率を狙い、出力をダブルエンドではなくシングルエンドとするのと低インピーダンスを両立する為にトランスを組み合わせることにしました。

使用するトランスは旧TANGOのNN-600-600という入出力共に600Ωでコアにパーマロイを使用したの広帯域のライン ・トランスです。

600Ωのトランスを負荷とするためには普通のカソード接地回路だと出力管でもかなり厳しく、低rpのレギュレータ管でもあてがわないとまともにドライブ出来ませんが、カソードフォロワーならばrpが数KΩのMT双3極管をパラにすることで もドライブ可能なことが実験で判明しました。

初段が決して大きくない増幅率(μ)=20程度の球による差動1段でもそのゲインは10倍(20dB)近くとれてしまうので、ゲインを10dB前後に抑えるのとLow-Boostを付加するためにNFBを利用します。

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NN-600-600は直流重乗出来るトランスではないので、差動増幅後のカソードフォロワーの負荷に直接トランスを繋ぐのではなく、定電流負荷にブリッジで接続にしてトランスの巻線には直流電流を流さない構成にし、2次側からNFBを初段に戻すことにしました。
最初はライントランスをカソフォロでドライブすることにf特や音質面での不安がありましたが、さすがにパーマロイコアによる変圧比1:1のトランスです。
その特性と音質に関してバラック実験を重ねるうちに不安は確信に変わっていきました。(^_-)

使用する真空管ですが、選別やメンテナンスの点でも全て同じ双3極管を使ったほうが都合が良いので、供給の豊富な球から選ぶことにしました。
直結回路の安定性、差動バランス、ゲインの観点からもμの高い球は避けて、中μ管(μ=20前後)の中から使えそうな球を探すと、 12AU7(6189,5814),6FQ7,12BH7,等があり、ピン接続が違いますが、63505687 等も候補になります。

先ずは手持ちの中からユニットのバラツキの無いものをセレクトすることでスタート。手っ取り早く 6FQ7/6CG7(GE) を使えばその構造からもバラツキが少ないので好都合なのですが、ゲインのある初段に使うとなるとマイクロフォニックノイズが気になり、沢山ある手持ちの中から探してもどれも皆ほぼ同じでこれと思しき静かな球は見つかりませんでした。

次に全球 12AU7/ECC82 を試してみましたが、ユニット間バラつきが多く、なかなか差動バランスが良いのが見つからず、マイクロフォニックも 6FQ7/6CG7(GE)  と大差ないので今ひとつでした。 12AU7 の高信頼管 6189W もほぼ変わらず、高信頼管でも差は無いです。

その次に試した 5814A(GE) は3本(4本中1本は不良だった(>_<))ともマイクロフォニックが小さく、バランスも悪くなかったので初段はこれに決定、もちろん全て 5814A で構成してもかまわないのですが、手持ちの数が揃わないので全球統一は断念しました。

カソフォロ段はバラツキの差が出にくいので初段の選別から弾かれた球を使うつもりだったのですが、 5814A(GE) は手持ちが3本しかないので結局は手持ちの数が多い 6FQ7/6CG7(GE) を使うことにしました。偶然にも GE 製で統一することになりましたが、小信号を扱うラインアップですのでブランドよりもノイズの少なさと安定性を優先します。

アンプとしての球数は片ch3本計6本で、電源に整流管 6X4 が存在するので全部で7球の構成ですが、カソフォロ段の 6FQ7/6CG7 パラの代わりに 5687 を使って5球または整流管無しにして4球構成にすることも充分可能です。

 


  ■ まだ未完成... 

長年プリアンプやラインアンプの必要性に疑問を持ち続けていましたが、信号をピンケーブルで繋ぐ以上はやはりパワーアンプは直接低インピーダンス出力でドライブしたほうが音質劣化を減少させます。
ボリュームコントロールの後に長いケーブルは御法度、最低でも低インピーダンスで出力出来るバッファーが必要だと思いを改めることになりました。

本機はまだケースに纏めるまで至っていませんが、機能としてはセレクターとボリュームにLow-Boostを備えた構成です。
現在はラインセレクター+ボリューム(所謂セレクターBox)の直後に入れて使っていますが、こういったスタイルも充分有りだと思います。但し、接続するケーブルは必要限最短で...。

何故トランス出力なのか?
それは先ずインピーダンスを低く出来るのと、差動アンプの2つのバランス出力を合成して1つのアンバランスに纏められるし、イザとなれば接続次第でバランス出力にも変更が可能なところが一番の理由です。

正直、ぺるけさんの提唱する差動1段のラインアンプでも実用的には充分なのですが、差動出力の片側しか使わないのがどうにももったいないのでトランスで合成して全部使 ってしまおうと...でもDEPPにはしたくなかったのでいっそのことCSPPにでもしようかとも思ったのです が、専用トランスが無いのでやるとすればトランスを2個使わないと実現出来そうもない...、現実的な解としてカソフォロのブリッジ負荷となりました。

幸い600Ω−600Ωのトランスは非常に広帯域であり、このコントロール・アンプの周波数特性はトランスの存在をも忘れさせてしまいます。


コントロールアンプ(プリアンプ)の問題点

過去コントロールアンプはアナログディスク再生のために必要なイコライザー+ラインセレクター+音量調整+フラットアンプの構成が基本でした。さらにはトーンコントロ−ルやフィルター、入出力ではテープモニター等を備えるのが主流で、機能満載のコントロール・センターが主流でしたし、つまみやレバースイッチ類が多いと偉そうに見えたものです。

CD時代になってからは次第にテープ機器も衰退し、音楽ソースのクオリティのボトムアップが進むにつれてプリアンプのフィルターやトーンコントロールの使用頻度が減り(もちろんイコライザーも不要)、CDPの出力電圧が2Vrmsと大きいこともあり、時代はコントロールアンプ(フラットアンプ)のゲインさえも必要としなくなりました。

残る必要な機能はラインセレクターと音量調整です。
これだけで充分にCDP+αの音源をパワーアンプに送り込むことが出来ます。
極端なことを言えばCDPとボリューム付きのパワーアンプがあれば音楽再生は可能です。
またはCDPの可変出力を使えばパワーアンプにボリュームが無くても使えてしまいます。

過去に主流だったプリアンプやコントロールアンプたちはフラットアンプ部でさえ20〜30dBものゲインを持ち、最大出力電圧が30Vにも達する等、無用なスペックを誇ったものが多かったように思います。そしてその過剰なゲインを制限するためにフラットアンプの出力に可変抵抗を備えたり、パワーアンプで絞ったりと、結局は無駄以外の何者でもなかったのです。
過剰なゲインはS/Nを悪化させ、多くの接点と豊富な機能は音の鮮度を劣化させる要因なのはご承知の通りです。


 コントロールアンプ(プリアンプ)を使わない場合の問題点

さて、コントロールアンプを使わないとどうなるだろう。(この場合イコライザーは含まないセレクター以降のライン(フラット)アンプと解釈してください)

セレクターと音量調整だけのアッテネーターを用意してボリュームを通過した信号をパワーアンプに入れることになりますが...ソースの録音レベルが低く、パワーアンプの入力感度が低い場合は、ゲイン不足になる可能性があります。

ボリューム(アッテネーター)が定インピーダンス型ならばほぼ問題はありませんが、普通の可変抵抗器をポテンショメーター・モードで使うとその抵抗値の半分が最大インピーダンスになり、その抵抗値の中点を頂点として回転角度によりインピーダンス変化を伴います。

このインピーダンス変化は前後に繋がれる回路インピーダンス(ピンコードを含む)の影響で周波数特性を変化させ、音質劣化の要因となります。たとえパワーアンプへの結線(ピンコード)が1m程度だとしても、残念ながら音質劣化を確認出来ます。

オーディオ帯域である低周波を扱うには 【Low 出し High 受け】という言葉がありますが、インピーダンスマッチングの必要のない低周波の伝送路では出力インピーダンスを低く、入力インピーダンスを高くする方が信号の伝送や分配に都合が良くなります。

整理するとラインコントロールに必要な機能とは入力セレクターと音量調整の他に低いインピーダンスで出力することが重要です。
すなわち、パワーアンプにある程度の長さのケーブルで繋がれる音源の出力は低インピーダンスに保たれることが重要であり、いくらシンプルでもその間に高抵抗のボリュームを挟んでしまうのはよろしくないのです。

例えばそのボリュームに1KΩや10KΩの低い抵抗値のVRを使えば周波数特性への影響は少なくなりますが、今度はそのボリュームが繋がれた機器の負荷が重くなり、機器によっては所定の性能が得られなくなる可能性があります。

既に過剰なゲインはS/Nを悪化させると書きましたが、適度なゲインと低い出力インピーダンスであればS/Nと音質の劣化は避けられるのです。

アナログ時代のプリアンプに含まれるラインアンプには約20dBくらいのゲインがありましたが、CD・SACDの時代のラインアンプは0〜10dB程度が適当と思われます。


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Last update 31-Oct-2010