2A3 全段直結差動PP 1994 - 2003 |
このアンプは既に解体されました。 DEPPからスタートしてSEPP,差動PPと変化しましたが、14年もの長い期間に渡って私のシステムの主役であり続けたアンプです。
作り始めたのは89年だったと思いますが、当初から2A3シングルと比較しながら「プッシュプルらしくない」、「2A3らしくない」音を求めて回路変更を重ね、90年には2A3並列SEPPとして一応の成果を得ましたが、妥協してしまったドライブ回路とイントラの容量的不足は不満でした。
92年にSEPPだった50CA10アンプを差動に作り直してからというもの、すっかり差動出力の音に魅了されてしまい、94年にこちらの2A3SEPPアンプも差動出力に変更しました。それからは小変更に留まり、時折DCバランスを調整してやる程度。途中サーボを追加したことにより手間いらずになり、約9年間ほぼ同じ回路のままでした。
その間1本の2A3がエミ減でダメになり一旦は6B4Gに変更しましたが、その6B4Gの1本も突然死(袴の内部でヒーター引き出し線の断線)してしまい、最後は右が2A3左が6B4Gと言う変則アンプになっていました。
2A3族はあまり丈夫な球ではないという話もありますが、多くの過酷な実験を繰り返したにもかかわらず10年以上もの間主役で働き続けたことで意外な長寿命を教えてくれた球でした。また、差動の片側が死ぬともう片側も道連れにする恐れがあるとも巷でささやかれております。けれども3度の事故に於いて一度も道連れにすることはありませんでした。始めの約5年はAB級でしたが、差動に改造してからは純A級動作で定格一杯の決して控えめな動作ではなかったのでなおさらです。
カソード抵抗を共通にする、或いは定電流で差動にした場合に懸念される道連れ説は少なくても私の経験では否定するしかありません。
■ 解体直前の回路
初段6072A(12AY7)ドライブ段6BX7の3段増幅構成で、定電流回路は初段、出力段ともに真空管を使っていますが2段目は共通カソード抵抗のみです。
ヒーター系の回路は省略していますが、出力段は各々独立して一方がHT-2A3の中点、もう一方は50ΩのVRです。初段はともかく、出力段の定電流源に真空管を採用すると発熱はすごいし(22W+ヒーター)、定電流性は悪いし、ろくなものじゃありません。
このアンプを一から設計していたならこんな事はしなかったと思いますが、改造を重ねたシャーシの穴をあけたままにするのは格好悪いのと、3段構成で電位が上がった出力段のカソード電位を吸収するには球の方が都合が良かったのです。無駄な発熱だと批判を受けそうですが、別に省エネアンプを目指したわけではないので私的には満足する音が出れば一向に構いません。
例えば、かの有名な佐久間アンプを例に挙げればそんな議論は全く無縁ですし、自作においては製作者の価値観であり、その人の勝手です。
残念ながらビーム出力管だけの定電流回路では定電流性が今一歩良くないのでトランジスタの助けを借りています。DCバランスサーボは上條信一氏のアイデアを使わせて頂き、02年末に追加しました。
■ 基礎体力
最大出力(ノンクリップ) 8W ゲイン たぶん27dBくらい? 高域カットオフ(-3dB) 90KHzくらい? ダンピングファクター 2.9(8Ω) 残留ノイズ 1.1mV 前後? 残念ながら稼働時のデータは出力とダンピングファクターしか記録していませんでした。
残留ノイズはRチャンネル(2A3)AC点火、Lチャンネル(6B4G)DC点火でLチャンネルの勝ち。
■ 音質傾向
長年主役を務めてきた(差動になってからは9年)だけに当初の目標であった「プッシュプルらしくない」、「2A3らしくない」音が出せたと思っています。
差動出力回路にして出力は減りましたが、全段直結A級差動増幅によるメリットは大きく、帯域バランス・情報量は申し分なく、直熱管特有の直裁的な表現力と優しさ・柔らかさを併せ持った音でした。
■ 2A3差動PPの歴史
1989年〜1994年: 初製作からは2A3並列SEPPを見て下さい。
1994年: 初段 6072(12AY7)差動/次段 6BX7 差動/2A3 F2021 差動出力 KNF付き
アンプの自作よりもパソコンの自作にハマッてしまい、暫くアンプいじりは頓挫していましたが、ようやく重い腰を上げ、イントラを外して3段直結に変更、私の2台目の差動出力アンプとなりました。
A級動作になった事もありますが、差動出力により音質はガラリと変わり、上品で端正な音色になりました。これは解体するまで当時のまま変わっていません。
1999年: 初段 6072(12AY7)差動/次段 6BX7 差動/6B4G F2021 差動出力 KNF付き
1本の2A3のエミッションが無くなり、4本とも6B4Gに変更。
もう10年も使っているのでそろそろ寿命が来た。しかし、このとき当然死んだ球とペアの相棒に電流が集中したが道連れにはならず無事。
2001年: 初段 6072(12AY7)差動/次段 6BX7 差動/2A3・6B4G混合 F2021 差動出力 KNF付き
1本の6B4Gが突然死に見舞われた。仕方なくRチャンネルを2A3に戻す。このときも相棒は無事。
2002年12月: DCバランスサーボ追加。
サーボ回路実験中に2A3が死んだ。おかげでペアではない以前伴侶を亡くした残りの1本に再登場願った。
2003年9月: のべ14年の稼働に感謝しつつも解体。(故障ではありません、2本の2A3と3本の6B4Gはまだ生きています)
Last update 17-Apr-2004