AKON HK35W-SPL-5 の改造  since  2013 Jan

※ 注意 ※ 

改造という行為によりメーカーの保証や製造責任が失われます。意味のわからない方は改造などに手を出してはいけません。
改造にはリスクが伴います。全てのリスクを理解した上で行動して下さい。
高電圧を扱う真空管アンプですので、くれぐれも絶縁には注意を払って下さい。
万が一、失敗したとしても誰のせいでもありません、改造した本人に全ての責任があります。
(決して AKON や私にクレームなど出さないように(^^;)


目的

本稿では市販の5V出力スイッチング電源を改造して6.3Vのフィラメント直流点火に使えるようにするのが目的です。

直熱管の点火に於いて2.5Vの452A3等の低電圧の管種ではハムバランサーだけでも何とか実用的なレベルまで追い込めますが、それよりも高い電圧の管種の場合にはフィラメントからの盛大なハムを充分なレベルまで打ち消すことが出来ず、しかもトリタン球では一桁くらい大きな残留ハムになってしまうので、無線送信機ならいざ知らず可聴帯域でのS/Nが重要なオーディオアンプにおいては殆どの作例でDC点火が採用されています。

以前から拙作の直熱管アンプでは5V点火の300Bや7.5V点火の801A、50等にスイッチング電源を採用してきました。
今回のテーマである811Aと言うトリタンフィラメントの送信管では6.3V/4Aが必要ですが、市販されている殆どのスイッチング電源の出力電圧は3.3V、5V、12V、24V、48Vの仕様であり、 もちろんですが特に直熱管の点火用途に合わせて設計されたものは存在しません。

汎用電源でたまたま電圧があってラッキーにもそのまま使えるのは5Vと12Vくらいで、直熱管の点火用途に欲しい6.3V、7.5V、10V等は通常のラインアップにはありません。拙作での7.5V点火は 運良く流用出来るACアダプターが見つかったから採用できましたが、当初は汎用品を改造するようなことはまるで考えにありませんでした。


無いものは作れ?

無いものは作ってしまうのが自作道のあるべき姿(?)ですが、アマチュアがスイッチング電源を一から自作するのは不可能では無くても、簡単ではありません。

他人様にお奨めするつもりはありませんが、コストパフォーマンスを考えると市販品を改造してしまうのが最も安価で効果的な方法です。
今回は6.3V/4Aを賄うべく最低でも25.2W以上の出力が必要になるのでAKONの基盤型35WタイプHK35W-SPL-5を使う事にしました。


スイッチング電源の基本

 スイッチング電源にも色々なタイプがありますが、AC入力でDC低電圧出力タイプの殆どが自励フライバック方式です。

電源メーカーのホームページには技術解説がアップされていますので例えばこちらで勉強しましょう (^^;;


HK35W-SPLの回路(一部)

残念ながらAKONのホームページに回路図はありませんでしたのでいつもの?『にらめっこ』をして2次側の回路図を起こしました。

オーソドックスにTL431を使ったフィードバック回路ですので電圧を変更するにはTL431のゲートが2.5VになるようにR01+R13とR17+VRの抵抗比を変更すれば良いのですが、R01が都合の良いことに0Ωだったので此処に6.3−5すなわち1.3V分の電圧降下を作れば電圧リミッターと電圧制御の両方を1石2鳥で変更可能です。 従って此処は抵抗ではなくシリコンダイオード(MD1,MD2)の順方向電圧約0.65Vを二つ使って約1.3Vを確保しました。(実際はVRによる調整幅があるのでダイオード1個でもギリ大丈夫です。)

青線で追加した部分(MC1, MQ1, MR1, MD3)がフィラメント点火で気になるラッシュ(突入)カレント防止のスロースタート回路です。
この部分の回路はミニ基盤を作って基盤に載せてあります。
部品は手持ちで在るものを使っているので参考程度まで。
 
追加素子  Parts Name Comment
MC1  47μF/16V 10VでもOK
MQ1  2SC372 2SC1815等でOK
MR1  33KΩ 1/4又は1/8W
MD1,2,3  1S954 1S1588等でOK

1V/div, 500mSec/div での立ち上がりの様子ですがTL431の仕様上、電源投入の瞬間に最低でも2.5Vから立ち上がってしまいます。
今回の付加回路では電源投入と同時に約3Vで立ち上がってそこから約2.2秒で設定電圧の6.3Vに達します。
もっと遅延時間を長くしても構いませんが、ラッシュカレント対策としてはこれで充分です。

MC1とMR1の時定数を変えれば立ち上がり時間が変化するので好みの時間に設定可能です。
当初回路接続を誤って立ち上がるまでに18秒もかかってしまいましたが、アンプ本体の+B電源は傍熱整流管5AR4によりもっと立ち上がりが遅いので特に問題にはなりませんでした ...(^^;


実装の注意

フィラメント点火用電源ですのでアンプ回路上のアースからは浮いています。
事前に単体で点火テストし、電圧を調整しておくこと。
実装する際に基盤のネジ取り付け穴はFG(フレーム・グランド)ですのでこれはシャーシ等に落としても大丈夫ですが、必ず入出力がシャーシから絶縁されていることを確認すること。
アンプ組み込み後、電圧測定や調整の際、不用意に手で直接触れないこと。(感電防止)

※ その後まれに電源が400Hz付近で発振する現象が発生!

→ 対策として出力に電解コンデンサ15000μF/16Vを付けました。

 


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Last update 13-Jun-2013