LUX MQ80 〜 Refined Type-B

 MQ80 ですが過去に入手した個体(Type.A)ではジャンクから電源トランス変更と回路変更して信頼性と音質を大きく改善し、次のオーナー様へと嫁いで行きました。

Type.Bではなるべく少ない変更でType.Aと同等以上の改善を狙っています。

これまでに6台のRefine実績がありますが、Type.BはMQ80 Refineの最適解として今後も継続するつもりです。

オリジナル回路と動作の解説は(LUX MQ80)の記事をご覧下さい。


 回路変更 Type-B その3  Jun. 2025 【初段”高域特性改善”&2段目カソード結合”バランス改善”】


■ 今回の固体

約1年前にオークションで入手していたジャンク不動品です。
残念ながらこの個体も電源トランスがレイヤーショートで使用不可でした。
今回はオークションにてLUXの同じ電源トランスが入手出来たので、特注の電源トランスを手配せずに済んでいます。

球も出力管、ドライバー、位相反転とそれぞれ1本づつ劣化して使用不能でしたので全ての球をNOSの未使用新品に交換しました。

■ 定番の変更ポイント

先ず、電源部で整流に使われているダイオードRA−1は全て(10本)交換。
次にB電源の遅延回路のCとRもいつものように3.3MΩと22μFを今回は270KΩと220μFに交換。ちょっとだけウォームアップスタンバイが短くなります。

そして定番の信頼性アップの為のな変更はB電圧をノーマルの250Vよりも低く抑ます。
この個体では電源チョークC1857が4端子タイプだったのでチョークインプットに変更するにも直列と並列接続が選べます。
Type.Bその1とその2の様に通常のC1857では2端子故に並列を選べないのですが、今回は並列にしてType.Cと同様にB電圧 を約200Vを選択。コレによって出力もType.Cと同様の30W仕様となります。


 ■ 回路図 MQ80 Type-B3

前回のその1その2とほぼ同様の変更です。

回路図中の青字青線で示した部分が変更・追加した箇所です。


 ■ 電源回路図 MQ80 Type-B3

この固体も無事次のオーナー様に嫁いで行きました。


 KMQ80 Type-B その 2  Jan. 2025 【初段”高域特性改善”&2段目カソード結合”バランス改善”】



 ■ 回路図 KMQ80 Type-B2

こちらはType-Bの2台目になります。キット版のKMQ80をベースに前回と同様 の変更を加えていますがCRの値に若干の違いがあります。

 


 ■ 電源回路図 KMQ80 Type-B2

この固体も次のオーナー様に嫁いで行きました。


 回路変更 Type-B その1  Mar. 2023 【初段負荷”低抵抗”化&2段目カソード結合”高抵抗”化】


■ 信頼性向上の為の変更

先ず、電源部で整流に使われているダイオードRA−1は逆耐圧が低いのとリード線が黒化していますので全て(10本)交換しました。

次にB電源の遅延回路のCとRです 。3.3MΩと22μFで時定数が設定されていますが、経年変化でCのリークが増え規定の時定数で動作しなくなる事が有りますので、それぞれ330KΩと220μFに交換しました。

そして信頼性アップの為の最も重要な変更は出力段へのB電圧を抑えることです。
これはブリッジ整流回路直後の電解コンをチョークの後に繋ぎ直してコンデンサインプットからチョークインプットにすることで実現し、コレによりB電圧は260Vから175V程度になります。
オリジナルでは6336A規格の上限目一杯、かなりの電力損失で使う設計がされていますので、アイドリング状態で片chあたり50W、両チャンネルで100Wもの発熱があります。
電圧と電流を絞ることで約半分の発熱とし、これは6336管内でのスパーク予防にもなり、6336A球自体の寿命の延長が期待出来ます。
この変更で最大出力は45W→25Wに下がりますが、エコロジーなアンプとなっても充分な出力がありますので昨今のSDG対策として長く楽しむ為にも妥当な選択かと思います。


 ■ 回路図

前回と同様に球を変更しないのですが、今回の初段は5極管動作のまま負荷抵抗を30KΩにします。
これにてゲインが1/3(−10dB)程度になりますが、Type-Aの3極管接続よりもこちら の方がちょっぴり高いゲインになります。
またミラー効果も生じないので高域カットオフを高いところにキープ出来るのも大きなメリットです。
そして初段カソードパスコンのオリジナルは普通の電解コンデンサでしたが、これをOSコンに変更しています。

2段目のムラード型位相反転回路 ですが、先ずは前回と同じく上下のプレート抵抗を揃え、今回は共通カソードに関して定電流回路を見送り、代わりに抵抗値を大きくしてマイナス電源に接続することにより差動バランス の改善を諮りました。

回路図中の青字青線で示した部分が変更・追加した箇所です。

カソードフォロワーを含む出力段には変更を加えていませんが、低域を制限していた段間のカップリングコンデンサ0.022μFを10倍の0.22μFに変更しています。
入力VRの直後にあった0.1μFも低域時定数ですので、取り去って抵抗に置き換えています。

トータルゲインが下がったことで当然負帰還量も減るので すが NFR 3.3Kはそのままにし、付随する位相補償コンデンサを 330P → 220Pへと変更。
最終的なNFBは14.7dBに落ち着きました。

電源部では初段の変更に伴い不足するB3の供給電圧を上げるべく、ドロップ抵抗 (180KΩ に200KΩを並列)とブリーダー(82KΩ追加)にて調整しています。

 


■ 特性

変更後の特性です。

 最大出力(歪率5%)  25 W
 オープン・ゲイン  40.3 dB
 クローズド・ゲイン  25.6 dB
 高域カットオフ (-3dB)  230 KHz
 ダンピングファクター  9.1(8Ω)
 残留ノイズ  0.15 mV

初段の動作を変更したことによりオープンゲインはオリジナルよりも約10dB下がり、その分NFB量も減ったのでアンプ自体のゲインは約2dB下がりましたが初段の高域特性が 大きく改善して高域カットオフはぐんと伸びています。
ダンピングファクターは 出力段省エネ運転のために少し下がりましたが必要にして充分な値です。


雑感

前回のType.Aでは初段の3極管接続とムラード型位相反転回路の定電流化による動作の改善でした。

今回のType.Bでは初段の負荷抵抗を下げ電流を増やして高域を延ばし、ムラード型位相反転回路は負電源を利用したカソード抵抗値増大化による 差動動作改善ですが、コレは充分な効果があったように思います。

Type.Aでは初段が3極管動作になって如何にも3極管らしいしなやかな音色が特色でしたが、今回のType.Bでは闊達で 躍動感にあふれオールマイティな印象です。
同じMQ80がベースですが、ちょっとの変更で両Typeともオリジナルとは違ったニュートラルで見通しの良い音質が得られています。

どちらを選ぶかはお好み次第ですが、変更箇所が少なく改造が少しばかり楽なこちらのType.Bがお奨め なのは言うまでもありません。


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Last update 7-July-2025