LUX MQ80 〜 Modified Type-C

 MQ80改 は既に Type-A, Type-Bに回路変更して音質と信頼性を改善し、それぞれ新しいオーナー様へと嫁いで行きました。

このType-Cも既に友人に譲ったもので、これまでよりも一歩踏み出してプリント基板のパターンにも改造を施し、 使用球も含めて回路を大幅に変更しました。

具体的にはムラード型を差動2段とし、全段をプッシュプル構成としてMQ80ベースとするこのシリーズ最高の音質を狙いました。

※ オリジナル回路と動作の解説は(LUX MQ80)の記事をご覧下さい。


 回路変更 Type-C Mar. 2023 【初段ハイブリッドカスケード差動増幅】


 ■ 回路図

今回は初段の5極管6267を双三極管6AQ8に変更し、更に2SK79をカスケード接続して差動増幅にしました。
但し、今回も定電流回路は挿入せず、初段の共通カソード抵抗に負電源を供給します。
差動2段回路では上下のアンバランスが強力に補正されるので 充分な特性が得られます。
でも、元回路の2段目は ムラード型だった為に上下のプレート抵抗に差を付けることでアンバランスが補正されていました。
このままでは不味いので前回と同じく上下のプレート抵抗を揃え、共通カソード抵抗はそのままにしています。
6AQ8
を初段に移動したので2段目にはヒーター電圧が同じで中μ双三極管の6FQ7を起用しました。

回路図中の青字青線で示した部分が変更・追加した箇所です。

カソードフォロワーを含む出力段には変更を加えていませんが、低域を制限していた段間のカップリングコンデンサ0.022μFを1μFに変更しています。
入力VRの直後にあった0.1μFも低域制限してしまいますので取り去っています。

トータルゲインはほぼ同じなので負帰還量もほぼ同じ、従って NFR 3.3Kはそのままにして付随する位相補償コンデンサ は外しました。
NFBもほぼ同じで約21dBの高帰還です。


■ 信頼性向上の為の変更

MQ80の改造で必ずやることが電源部で整流に使われているダイオードRA−1(10本)の交換です。
そしてB電源の遅延回路のRとC(3.3MΩと22μF)も330KΩと220μFに交換。

さらにB電圧を抑える為にチョーク・インプットに繋ぎ直しますが、今回の固体に搭載されているチョークC1857は4端子2巻線構成なのでシリーズとパラレルが選択出来、オリジナルはシリーズ接続のところ をパラレルに繋ぎ替えて からチョークインプットにすることでB電圧を200V程度にすることが出来ます。
Type-AとBのチョークは2端子だったので、同じ品番のC1857でも2種類が存在するようです。
入手出来たMQ80の固体に依存しますが、4端子のC1857チョークが載っていた場合は標準以外2種の電圧を選択出来ます。
この変更で最大出力は30Wが確保出来、Type-Bの25Wよりも出力低下が抑えられます。もちろんシリーズ 接続にしてより安全な25W仕様も選択可能です。

   B 電源平滑回路  +B1 電圧 出力
 Normal / Type-A  コンデンサインプット  約 260 V 約 40 W
 Type-B チョークインプット(2端子)  約 175 V 約 25 W
 Type-C チョークインプット(4端子2巻線並列)  約 200 V 約 30 W

+B1 以外では初段の変更に伴い不足するB3の供給電圧を上げるべく、ドロップ抵抗 180KΩ を22KΩに変更しています。
さらにカスコード段のグリッド電位に+12Vを供給する為に100KΩと12Vツェナーにて+B4と初段差動の負電源ーBを増設
しています。


■ Type-C の特性

大幅変更後の基本特性です。

   Type-C  Original
 最大出力(歪率5%)  30 W  40 W
 オープン・ゲイン  48.4 dB  49.6 dB
 クローズド・ゲイン  27.2 dB  27.6 dB
 高域カットオフ (-3dB)  230 KHz  110 KHz
 ダンピングファクター  12.5(8Ω)  40(8Ω)

初段の回路を大幅に変更しましたがオープンゲインはオリジナルより若干低め、NFB量もほぼ同じですが初段の高域特性が 大きく改善して高域カットオフはぐんと伸びています。
ムラード型から直結差動2段としたことで低域時定数も3から2に減らせたのもメリットです。
ダンピングファクターは 出力段省エネ運転のためオリジナル程大きな値ではないですが、必要にして充分です。


雑感

以前のType-AやType-Bでは初段の動作変更とムラード型位相反転回路の精度向上による改善でした。

今回のType-Cでは全段プッシュプル構成とすることにより、より繊細で立体的な表現が可能になりました。

MQ80をここまで改造するのはパターンの切った貼った等でけっこうな手間が掛かりますが、それだけ価値のある音質が得られています。

 

※このMQ80改シリーズ全てに於いてRCA入力端子、電源ソケット、出力端子は全て現在の使いやすいタイプに交換してあります。


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Last update 10-May-2024