300B CSPP  since Jan 2011

   

※ 本機は出力管SG300Bが寿命を迎えた為、2012年末引退しましたが、2013年10月:借り物の300Bで一時的に復活させ特性測定を行いました。

前作 300B全段直結差動PP のOPTと回路を変更して、マッキントッシュタイプCSPPへと生まれ変わりました。

前作は全段が強制的にA級動作となる差動アンプで、その端正な音質は拙作の差動アンプの頂点を成すものでした。
差動アンプとの付き合いはかれこれ18年以上になり、差動故のメリットやデメリットはもう充分に理解したつもりです。
差動アンプの音は端正で高品位ですが、高域の質感に弱冠の不満を感じていたことから自分の求める理想のアンプにはなりきれていませんでした。

ここ数年付き合っているマッキントッシュタイプCSPPアンプはドライブが難しい事や専用トランスが必要なことが大きな欠点ですが、このCSPPこそが自分の求める音に最も近いと思えます。

これまでの拙作やLUXアンプの改良でもCSPP共通の音質的特徴があり、過去にはなるべく避けていたOPT2次側からのオーバーオール負帰還をかけてもCSPPアンプは音の鮮度を殆ど損ないません。自分が勝手に思っているだけかも知れませんが...(^^;; (もちろん全てではなくケース・バイ・ケースです)


回路構成

初段は前作を踏襲して 6J11差動と 6FQ7 によるアクティブ負荷にて構成。続くカソードフォロワーによるドライバー段は 6BL7 から手持ちの都合で 6SN7 の12V管である 12SN7 に変更し、差動出力だった 300B を蟻印トリファイラ捲きOPTによりマッキントッシュタイプのCSPPに変更しました。

6J116FQ7 の組み合わせは5極管と3極管による変則的なSRPPとなりますが、CSPPになっても以前と同様に初段だけで 300B をドライブする為の電圧とゲインを稼がなくてはなりません。しかし、これだけでは50%のKNFが強烈な逆風となる出力段をドライブ出来ません。
ここでは出力段の50%KNFに打ち勝つ為にブートストラップを利用します。

以前は電流を10mA以上流す設定にした為に 6BL7 を採用していましたが、CSPPでは出力電圧の50%が逆風になるので広い電圧範囲で動作させる為に電流を絞り、尚かつドライブ電圧の負担を少しでも減らす為にバイアスの浅い 12SN7 に変更しました。
尚かつ、12SN7プレートへの電源供給をブートストラップにより 300B のカソード(フィラメント)から常に一定の電圧を保ちます。

以前の差動PPでは通常型DEPPのA級動作よりもさらに負荷を寝かせてRL=5KΩ(P−P間10KΩ)と高めの電圧をかけていましたが、CSPPで負荷を寝かせると初段にキックバックされる電圧が大きくなりドライブには不利になります。ドライブをなるべく楽にする為にはOPT1次側の電圧を低くするべく1次インピーダンスを低めに設定することが必要です。
今回はOPT1次インピーダンスを700Ω+700Ω+700ΩにしたマッキンタイプCSPP用トリファイラOPTをARITOさんに捲いてもらいました。

トリファイラと云う1次巻線仕様はバイファイラが2本の線を同時に捲くのに対してもう1本追加して3本同時に捲いたトランスです。1本目はプレート側巻線になり、2本目はカソード側巻線になるもので、此処まではバイファイラと同じですが3本目の巻線は初段、及びドライバー段へのブートストラップに使います。

ブートストラップ用捲き線を用意したのは 300B のようなバイアスの深い球ではグリッド電位とプレートの電位の差が500V近辺に達してしまう為に出力段のプレートからブートストラップをかけようとするとドライバーや初段にかなりの高圧がかかってしまい球の耐圧スペックをオーバーしてしまいかねません。その為に別巻線を用意したものが今回のトリファイラOPTで、マッキントッシュのMC275等も同様のトリファイラ巻線でドライバーのブートストラップを行っています。

回路図上での大きな変更点は出力段の定電流回路が無くなったのと、トリファイラの巻線にからむブートストラップが追加され、さらにNFBも追加されました。以前の差動アンプでもKNFを利用していた為に回路図は見た目にそれ程変わっていませんが、出力段の動作は全くの別物です。
DCバランスサーボやハム・キャンセラーは以前のままで動作します。


電源回路

中途半端なままですが、電源は3段重ねの嵩上げ方式です。

 


基礎体力 (Rev.0)

 最大出力(ノンクリップ)  28 W 
 最大出力(歪率5%)  32 W 
 ゲイン  24.3 dB
 高域カットオフ(-3dB)  110 KHz
 ダンピングファクター  7.6 (8Ω)
 残留ノイズ  0.35 mV 

ループ帰還を10.5dBかけていますので既に充分な性能を得ていますが、初段の電圧不足により最大出力はこの程度です。
と、云ってもA級差動の時の22Wからすると結構増えました(^^;

※解体前に借り物VV300Bで歪率を測定しました。


■ 雑感

ここまでして300BでCSPPを組む必然性など全くありませんが、前作の差動出力を上回る性能と音質をマッキンタイプCSPPに求めたというところです。

電源の高電圧とドライブ電圧の高さはどうしようもありませんので、CSPPにはなるべく低インピーダンスかつ低電圧で動作するレギュレーター管や水平出力管のほうが圧倒的に設計・製作が楽ですし、それらの球のもつ本来の力が発揮されるハズです。

誰もこのアンプを真似する人はいないと思いますが、あくまでCSPPの一例としてCSPPを作ろうとするビルダーの参考になれば幸いです。

6L6CSPPPでもお世話になりましたが、今回のトリファイラ捲きOPTもARITO@伊吹南麓さんの手によるSEABASSスペシャル仕様です。
改めて感謝しますm(_ _)m

 

 

 

 

 

 


■ 音質

完成後の2011年当初は良かったのですが、その後マルチの中域として使っていた為に1年以上全帯域での音質確認をせずに2012年のCSPPオフ会に参加することになりました。

ところがオフ会当日に出て来た音は覇気の無いなんとも物足りないものでした。
SPとの相性かとも思いましたが、それにしても比較した他のアンプに比べてもCSPPらしさはあるものの300Bらしさは微塵も感じられず当日参加した方からも疑問の声も...(>_<)

自宅に帰ってからフルレンジでチェックするとやはりかつての元気で重厚な音質ではなく、高域がつまって出ないのっぺらぼうなつまらない音にがっかり。

もはやMade In china の300Bは劣化したとしか思えませんでした(T_T)

それでも懲りずに暫くはマルチの中域として使っていましたが、やはり劣化は止まらずにだんだん音が痩せてゲイン不足を感じるようになり、中域だけでも使い物にならない音に成り下がってしまいました。これはもう ダメです。

結局2012年末をもって引退としました。

 

 

2013年某月某日

解体前に特性だけは記録するべくVV300Bを借りて測定に臨みましたが、調整後に音質を確認するとかつての伸びやかで重厚な音質が戻っていました。

やはりエミ減していない300Bならまともな音が出るようで安心したのであります(^^;


■ Appendix

トリファイラ捲きOPTの資料


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Last update 22-Nov-2013