イントラ反転 46(VT-63) シングル  1989-2005

 

※ 本機は2005年5月を以て、46+超3極管接続シングルへ変更しました。

UY−46 と言う球はグリッドが二つあるので直熱4極管?と思いがちですが、名称はダブルグリッド・トライオードとなっており、第2グリッドを第1グリッドかプレートのどちらかに繋いで使う3極管です
ソケットがUYのせいか人気は今ひとつですが、宍戸アンプや佐久間アンプのドライバーに使われた実績があり、両氏ともその音質を絶賛しています。
出力管としての製作例は故浅野勇先生が『続 魅惑の真空管アンプ』で46 A級プッシュプル・パワー・アンプを発表されており、45代換えという位置づけをされています。オーディオアンプとしての採用例は知りませんが、B級PPでは20Wも取り出せる実力の持ち主です。

宍戸スタイルイントラ反転アンプは送信管を採用した作例が殆どで、もっと大出力の作品が多いですが、手軽に宍戸スタイルを試すには46は格好の球です。

このアンプは88年6月に発売された三栄無線の「直熱純三極管2A3トランスドライブシングルステレオアンプ」キットをベースにしています。
キットの内容は中国製2A312AT712BH7Aの2段でトランスドライブ(パラレル・フィード方式)するもので整流管にはロシア製の5U4Gが付いてきました。
最初から三栄無線オリジナル回路で作るつもりは無く、シャーシーのルックスが気に入ったのとパーツ集めで楽をする為のキット購入で、2A3を料理するための実験が主目的でした。2A3では色んなドライブ回路を試しましたが、2A3SEPPが出来た後はその目的を終え、宍戸スタイルイントラ反転に作り直したものです。


回路構成

故宍戸公一先生が発表した作品群に於いて出力管に46を採用した作例はありませんので、他のイントラ反転作品を参考にしました。

初段とドライブ段には複3極管である6CS7を使い、直結2段でイントラをドライブ、出力管の46は両グリッドを繋いで使うポジティブ・バイアス動作のB級接続です。
2番目のグリッドをプレートに接続すればネガティブ・バイアスの普通の3極管特性となり、RL=6.4KΩで出力は1.25W程度取れますが、本機ではB級接続とすることによってプレート損失10W程度でプレ−ト損失15W動作時の2A3並の出力3.4Wを得る事が出来ました。

初段は6CS7第1ユニット、次段は第2ユニットでイントラは2A3キットオリジナルのNC−15を1次2次を逆にした倍率0.5倍のステップダウンで使い、グリッド電流の流れる方向をドライブ段の方向と逆にしてイントラ反転です。

46の動作点は手探りでしたが、Ep 250V、Eg +16V で Ip 40mA を動作中心点としました。
6.3V巻線を倍電圧整流したバイアス電源がちょうど+C電源にマッチします。
XE−20Sは5KΩで使用、46のプラスバイアスの動作では内部抵抗が大きくダンピングファクターが1以下ですので、OPTの2次側巻線をKNFに使っています。

6CS7の他には6DE76EW7が使えます、6DR76FD7も使えますが無帰還ではゲインが過剰になってしまいます。
友人の友人がコピーを製作しましたが、その例では6DE7NC−14を採用しています。

電源トランスはMS−160です。46のフィラメントは2A3と同じ2.5Vですが、電流は2A3の2.5Aに対し1.75Aで Ip も2A3の60mAに対して40mAですので出力段の消費電力は2A3の3分の2と省エネです。

出力管ソケットがアダプターによる落とし込みに対し、整流管ソケットはシャーシー直付けで5U4Gの高さが出力管より高くてバランスが悪いので背の低いGTスタイルの5U4GBにしました。(写真は同等管5GK17
電気的には一回り小振りな5Y3で充分です。


基礎体力

 最大出力 (ノンクリップ)   3.4 W
 最大出力 (歪率5%)   4.5 W
 ゲイン

26.7 dB

 高域カットオフ (-3dB)  38 KHz
 ダンピングファクター  1.0(8Ω)
 残留ノイズ  2.0 mV

残留ノイズはちょっと多めですが、AC点火でオーバーオールの負帰還無しシングルアンプではこんなものでしょう。
2A3シングルとほぼ同じ出力が得られるにも関わらず、3分の2のプレート損失電力で済んでしまう大変電力効率の良いアンプでもあります。


■ 音質傾向

たかだか4Wそこそこの出力でダンピングファクターも小さいですが以外に歯切れの良い低音を聞かせてくれますし、2A3シングルとは明らかに違う直熱管イントラ反転方式の特徴を備えた繊細かつ力強い音が得られました。

直熱3極管シングルの素直な音は傍熱管では得難い魅力があり、小規模ながらも宍戸スタイルイントラ反転の音が充分に楽しめます。
しかし、ダンピングファクターの小ささ故にスピーカーを選んでしまうので注意を要します。

89年に製作してから現在までこのアンプは他のアンプの音質評価する際のリファレンスとなり、これより音が悪いアンプや回路は失敗作として解体となります。

10数年の間に他のアンプは姿を幾度となく変えましたが、本機は89年からそのままです。
本機を単独で楽しむには充分なのですが、比べてしまうと他の拙作アンプ達と歳月の隔たりを感じます。

 


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Last update 21-May-2005