46(VT-63) +超3極管接続シングル since May 2005 |
※ 本機は2008年3月に一旦解体しました。しかし、別シャーシで復活する予定です。
前作のイントラ反転 から方針を転換し、+バイアス動作の直熱管としてはおそらく初の製作例?となる超3結Ver.1で構成しました。
このアンプは89年に宍戸スタイル"イントラ反転"として製作してからというもの15年以上経過し、もはや最近の作品とは比べるのが酷になってしまい、リファインを意識するようになってから久しい感がありました。
下手すると6BM8等のミニ超3アンプにも脅かされて"イントラ反転直熱管シングル"と言ってもその存在意義がすっかり弱いものになっていました。前作の欠点と言えば、+バイアスと無帰還の為にダンピングファクターがたったの1.0でしかなかったことが一番に上げられます。
(UY-46は第2グリッドをプレートに接続することで−バイアス動作も選べますが、+で使った方がより出力が取れます)そのダンピングファクターの低さ故にどうしてもスピーカーを選ぶアンプであり、高能率の大型SPではそこそこ良くても小型の低能率SPではその力を発揮出来ないでおりました。
ダンピングファクター向上には拙作の801Aシングルのように多量のカソード帰還を利用する手もありますが、ドライブが大変ですし、再び同じ回路を作っても芸がありません(^^;)
本機では手軽?に組める超3極管接続を+バイアス動作の出力管に応用したものです。
(+超3 (プラス・チョーサン) 又は +STC と呼んでいます(^^;)この応用は、これまで今ひとつと感じて半ば諦めていた管種の送信管アンプを再度脚光を浴びせさせるに充分な可能性があります。
同じ+超3スタイルによる仲間達の作例を別ページに纏めました。
全管球化した Rev.2 はこちら。
■ 回路構成
超3極管接続Ver.1では3極管のrpとμで5極管の高gmを制御して現実には存在しない3極管を越えた3極管特性を得るものですが、3極管と5極管だけでなく、3極管と3極管の組み合わせでも超3極管接続は成立します。
もちろん出力管は高gmの方が有利ですが、gmが低くrpの高い出力管でも帰還管による100%P-G帰還の働きによってその特性を大幅に改善出来るので、オーバーオール負帰還に頼らずとも良好な周波数特性とダンピングファクターが期待出来ます。先ず、超3極管接続を実現する為には出力管のグリッドをハイ・インピーダンスに保った上で電流ドライブしなければなりません。
しかし、+バイアスの球ではグリッド電流が流れる為(流す為)に否が応にもインピーダンスは低くなります。
と言うことは、そのままでは帰還管と出力管のグリッドをハイ・インピーダンスで電流ドライブする超3結としては動作出来ません。これを解決するには6AC5等に代表されるダイナミックカップルにするか、カソードフォロワーを挿入してグリッド電流の流れない普通の−バイアス球をバッファーとしてやれば解決出来ます。本機では電流を設定する上で自由度の高いカソードフォロワーを選びました。
超3結の帰還管とカソードフォロワーには前作の6CS7をそのまま利用して、第1ユニットを帰還管、より低rpの第2ユニットをカソードフォロワーに使います。
初段は手軽なところでJ-FETの2SK117(BL)にしました。ハイブリッド構成ですが、当然全段直結です。
(※写真ではまだイントラがシャーシに載っていますが、回路上からは撤去しました。)
もちろん全管球式にすることも不可能ではありませんが、先ずは実力チェックです。46の動作点はEp 250V、Eg +15V で Ik 45mA (Ip 40mA+Ig 5mA)を動作中心としました。
出力管プレートから帰還管に電流を供給しているので、もはやOPTの電圧降下で出力管のみのIPを測定できなくなっています。依ってIk測定用としてカソード側に10Ωの抵抗を入れてあります。
バイアス電圧が+15Vと低いのでカソードフォロワーのカソード電位をツェナーダイオード(1Z30)でレベルシフトし、さらにカソードフォロワーのカットオフ付近の動作を避ける為に46のカソード(フィラメント)側にも 6.2V ツェナーダイオード(1N5341B)を入れて負バイアス領域までドライブ範囲を確保しています。
アイドリングは2SK117(BL)のソース抵抗を可変することで出力管のバイアスを加減して調整します。電源回路は前作とほぼ一緒で、出力管の固定(+)バイアスが不要になった分、さらにシンプルになっています。
■ 基礎体力
最大出力 (歪率5%) 2.88W ゲイン 22.0dB
高域カットオフ (-3dB) 125 KHz ダンピングファクター 5.0(8Ω) 残留ノイズ 0.9 mV イントラドライブよりも最大出力は減りましたが、ダンピングファクターは大きく向上し、残留ノイズもまあまあのレベルに抑えることが出来ました。
出力を得る為にはダイナミックカップルの方が良かったのですが、初段・ドライブとの相性が悪く、歪みが大きくて実用になりませんでした。チャレンジするなら初段も球にしてからの方がと思い、今回は見送りました。
歪率は出力と共に素直に上昇する、2次歪み主体のカーブです。
超3極管接続のおかげで、古典管から得られたとはにわかに信じられない広帯域な特性になりました。
(別に古典管が狭帯域という意味ではないです。唯、古いと言う先入観からカマボコ型の f 特を思い浮かべてしまうと...)もとより、効率の良い省エネアンプですのでこれから迎える夏用に消費電力と発熱の少ないアンプとして活躍してくれそうです。
■ 音質傾向
たかだか3Wそこそこ(未満)の出力ですが、直熱管シングルでも今回はかなりのワイドレンジでダンピングファクターも大きくなりましたので、前作の欠点を克服したと言える音質が得られています。これでもう6BM8等のミニ超3アンプ達に脅かされることはないでしょう ...(;;^^;;)
拙作801Aシングルはトランスドライブらしい深味のある音質が特徴で、弱冠ナローレンジながら独特の響きを演出しますが、本機は対照的にサラリとした感触ながら曖昧さのないアキュレートさが持ち味です。同じ直熱管シングルでもその表現には違った個性があり、どちらも捨てがたい魅力であります。
※あくまで私個人の主観による感想ですので、他の方が聴いて同じ感想を持つかどうかは解りません(^^;)やはり直熱3極管シングルの音は傍熱管では得難い不思議な魅力があり、+バイアス直熱管超3結シングルは驚きのハイクオリティサウンドを楽しませてくれます。
これまで我がシステムではシングルアンプの出番は少なく、もう解体してPPに造り替えてしまおうかと何度も考えましたが、久しぶりに弄ってみて個性のあるシングルアンプの楽しさを再認識しました。今後このアンプは新リファレンスとなり、これより音が○○なアンプは解体の憂き目に逢うことになるのでしょうか... (*^_^*)
★ 追試される方へ
46のカソードに入れた6.2V/5W ツェナーダイオード(1N5341B)は手持ちの都合で採用しましたが、実際の損失電力は300mW程度ですので、1W型の1Z6.2又はRD6.2Fで充分です。
MT管の6CS7ではなくGT管を使いたい方は6SN7で代用可能ですが、カソードフォロワーの負荷抵抗2KΩを4.7KΩに変更して下さい。
当たり前ですが、歪み率等の特性は拙作オリジナルとは少々違ったものになると思われます。2SK117 はBLランクを使って下さい。
整流管は5U4でも5Y3でも使えますが、5Y3ではB電圧が不足するかも知れませんのでその場合は320Vタップをお試し下さい。
5R4/5AR4の様な傍熱型の整流管を使うとB電圧が高過ぎますので、抵抗で調整して下さい。製作上での注意点ですが、ツェナーダイオードの放熱を確保する為に足は短く切らないで長いままで取り付けて下さい。
調整は以下の手順で
・先ず、初段のソースの100Ω可変抵抗は左右とも中点にセットして下さい。・出力管を抜いた状態で電源を入れて両ch共カソードフォロワー段の負荷抵抗2KΩ(4.7KΩ)の両端を約20Vになるように100Ω可変抵抗を調整します。
・次に出力管を入れて出力段カソードの10Ωの両端で450mVになるように100Ω可変抵抗を左右を交互に調整して下さい。
・左右のchの各部電圧を確認して、極端な違いがなければOKです。
※本機の電源部にはブリーダー抵抗が入っていませんので電源off後にはくれぐれも感電に気を付けて下さい。
気になる場合は、チョークの出力側から100K〜250KΩ程度の抵抗でグランドに落として下さい。写真は静岡のKさんの作例です。
別ページに纏めました。こちらへジャンプ!
Rev. 2 全管球化 Aug-Sep 2006 |
お手軽動作をねらったJ-FET 2SK117を初段にしたハイブリッド回路は1年以上常用機としてノン・トラブルで稼働したことで信頼性にも問題がないことが確認出来ましたが、耐入力の確保や2SK117の動作電圧も高めの設定である為、初段の動作点の設定には弱冠の不安も無いわけではありませんでした。結果的にオーライではありましたが、出来ればもうちょっとスマートにしたいところです。
本来ならばバイポーラTRをカスケ−ドで追加すべきでしたが、回路を複雑化するよりも(別に複雑と言う程ではないが...(^^;)
どうせやるのなら初段に5極管を使った方が私の性分に合います。初段FETでも音質的には全く不満は無いのですが、私的にはハイブリッドよりも全管球構成の方が好きなのです(^^;)
と言うことで一年ぶりのリファインに踏み切りました。
■ 回路構成
先ずは初段のJ-FETを球に変更します。
ネット上での超3結アンプの作例では6AU6とか6AK5等が使われることが多いようですが、これらの球はgmが低く、FETと同等のゲインを確保するにはちょっともの足りません。
gmが10mS以上の球には12BY7Aや6EJ7等がありますが、今回は小さな巨人WE404Aを起用してみました。WE404Aを使った製作例は10年くらい前に複数の方から出ましたが、最近はあまり見かけなくなりました。
互換球は5847、6R-R8で、これは拙作の6L6超3結差動PP&CSPPにて起用した球です。Western球は人気が高く、MJ等に製作例(特に金田アンプ)が発表されると市場価格もあっという間につり上がってしまい、なかなか入手は困難ですがそれでもかろうじて入手は可能です。
本来前記の6L6超3結差動PPに使う為に購入したのですが、手に入ったものが中古だった故、4本のうち1本の電流が他より少なくPPではバランスが取れなかった為に本採用には断念し、音質確認だけにに留まったものです。
今回はシングルアンプのヘッドですので少々ばらついていても大丈夫だし、2本しか使わないので良品を選べます。ピン接続は違いますが、もちろん6EJ7または12BY7A等も使えます。
高周波増幅用5極管ですので、カソード抵抗は330Ωでカソードパスコンなしでも高域特性の劣化はあまりありませんが、最初はゲインを少しでも稼ぐ為にパスコンを付けました。私にしてはパスコンを付けるのは珍しいのですが、ダイオードでカソードバイアスを作ると、定電圧電源からプレート電圧を供給しないとまるで安定しないのは拙作801Aシングルで経験していますので、本機の様な超3極管接続ではカソード抵抗にならざるを得ませんのでパスコンの検討となったわけです。しかし、歪率を測定すると2SK117の時よりも数倍悪化してしまいましたので、結局パスコンは外しました。
2SK117のソース抵抗を可変して調整していた出力管のバイアス調整は404Aのスクリーン・グリッドを調整するスタイルとしています。
超3結の帰還管とカソードフォロワーには引き続き6CS7を使えば簡単だったのですが、初段の場所は404Aに取られるのでシャーシー上に載ったままだったイントラのスペースを利用しなければなりません。となるとそこにMT管の6CS7ではいささか不格好なので半ば必然的にGT管でポピュラーな6SN7を使いました。Rev.1のカソードフォロワー負荷抵抗は2KΩでしたが、6SN7に合わせて4.7KΩに変更しています。
ドライバー管のグリッド電圧も上がった為、カソードに挿入しているツェナーも30V(1Z30)から2階建てで60V(1Z30 x2)に変更しました。初段J−FETの回路ではドレイン電圧が低いため電圧変動の影響も少ないし、温度ドリフトも気にするレベルではありませんでしたが、今度は球となると電源変動と共にヒーターに絡むエミッションも変動するのである程度のドリフトは覚悟する必要があります。
本機では電源変動により出力管バイアス電圧が変動するのを初段のスクリーン電源を工夫することで、ドリフトを抑制しています。
5極管の場合、通常はスクリーン電圧の定電圧化等をして動作の安定化を図りますが、超3結でそんなことをすると却って逆効果です。スクリーン電圧はプレート電流に対しプレート電圧とは逆に作用するので、単純にB電源から抵抗により分圧して供給してもある程度の効果が得られます。しかし、抵抗分圧ではB電源変動によりプレート電圧が変動する量に対して分圧した割合(1/3程度)しか変動しませんので、充分に補正出来ません。そこでスクリーン電源には51Vツェナー(RD51B)を直列に入れて電圧変動分をより反映するようにしています。
スクリーン電圧調整のVRはRV30YNタイプの10K(B)です、10KΩまでは電力容量が1Wありますので安心して使えます。
此処に小さなVRを使うと抵抗体の発熱やブラシ電流容量不足で動作不安定の原因になります。
スペース的に小さいVRしか使えない場合は巻線型のRA20Y(1W)かCOPALのλ13T(3/4W)をお奨めします。λ13Tなら充分な電力容量がありますが、これより大きくて一般的なサイズのRV24YNは電力容量が1/4Wでしかありませんので此処には使えません。
■ 基礎体力
最大出力 (歪率5%) 2.4 W ゲイン 12.5 dB
高域カットオフ (-3dB) 125 KHz ダンピングファクター 5.9(8Ω) 残留ノイズ 0.9 mV だいぶゲインは低下しましたが、ダンピングファクターは上昇しました。
結局初段パスコンを外したのでゲインは落ちましたが、付けるとゲインとは裏腹に歪率が悪化します。
前回(8/4)の測定中にエミ減と疑われた46には問題がなく、実際にエミ減していたのはもともと中古で貰い受けた6SN7と5GK17(整流管)でした...(T_T)スペアの6SN7が手持ちになかったのでMTの同等管である6FQ7を急遽代打に起用しました。
整流管はオリジナルの5U4GBに戻しました。6SN7(6FQ7)でのドライブは6CS7に比べてちょっとばかり力不足のようで最大出力付近の歪率が悪化しましたが、実用的には殆ど変わりありません。
歪率は実用域がグッと下がって見慣れたカーブになっています。
125KHzの−3dBポイントは殆ど変わらなくても、その上の周波数では急激に減衰しています。
※ 後日、あまりに減衰カーブが違うのでおかしいなぁと思いつつその原因を考えていましたが、どうやら測定ミス!のようですm(_
_)m
それは測定をするときに安直にも歪率計内蔵のレベルメーターでレベル測定をしてしまった為です。歪率計には100KHz以上で減衰するフィルターが内蔵されている様で、このような高域減衰を測定するには適しません。
以前(Rev.1)の測定時と同様に通称”ミリボル”と呼ばれる交流電圧計で測定するべきでしたが、測定の時点ではその違いにまるで気付いていませんでした(^^;
既に解体後なので再測定も不可能な状態ですが、将来復活の時にはキチンと比較出来るかも知れません。
■ 音質傾向
以前のサラリとした印象からちょっと変わって小出力シングルらしからぬ”濃い味”が出ています。これはやはりWE球の味でしょうか? ...(;;^^;;)
でも、この変化は良し悪しではなくて、どちらが好みかで判断が別れるところかと思います。2SK117駆動ハイブリッドもWE404A駆動全管球もどちらも捨てがたい魅力ある音質ですが、球に拘るなら404A、作りやすさと安定度はK117です。
でも2SK117で組むのならやはり動作電圧が高すぎますので、ドレイン側にバイポーラTRを入れてカスケードにすべきところです。
しかし、シンプル・イズ・ベストと考えるとこれで充分とも考えられるし、もっと高い耐圧のJ-FETを使う手もあります。最終的には使う人の判断に任せるという無責任?な結論にしておきます。
+超3アンプの仲間達 Sep 2006 |
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Last update 17-Jan-2009