超3結イントラドライブ 2A3 シングル since Jan 2025 |
原点回帰 ....、もともとキットだった本機は三栄無線のオリジナル回路で組んだことがないのですが、RCA50 を経験したその知見からまた新たな2A3の可能性を試してみました。
さて、先人たちによって様々な2A3シングルアンプが発表されてるので いろいろな選択肢がありますが、同じSOVTEK2A3 を使ったロフチンホワイト改め超3結2A3シングルが ビックリの高音質だったので、それに負けず劣らずのモノをトランスドライブで出来ればといつものお遊びです。
今回は前作の50で使用した超三極管接続によるインターステージトランスのドライブで出力段の2A3をドライブし、さらに54%のKNFを利用したP−K出力合成とすることで実用的なダンピングファクターを狙いました。
■ SOVTEK2A3
過去、このアンプの出発点は初期の中国製2A3でした。 その後RCA2A3、UY-46、RCA50と変化しましたが、 2000年以降に出現した東欧や中国製の1枚プレートの2A3が思いのほか使えることが判り、2A3に原点回帰するにあたってコストパフォーマンスの良いSovtek2A3を選びました。
2A3の標準的な動作点はEp 250V、Eg -45V で IP 60mA ですが、Sovtek や 中華製 の1枚プレート2A3 では300Bをベースにフィラメントを2.5Vに変更して作られたとも言われていますので、プレート面積は充分大きくその損失も充分余裕があるように見えますし、もはや2A3とは別の球とも言える存在です。
かの50の様にグリッド電流が流れやすい訳でも無く、バイアスもそれ程深くなく比較的ドライブしやすい直熱管の 印象がありますし、本家RCA等の貴重な球では無く現在でも供給され続けている管種なので本機では旧来の古典的定格のプレート損失15Wを無視し 、電源容量が許す範囲で17W程度の損失で動作させています。
拙作801A singleのRev.4では超3結イントラドライブのみならず、801Aのバイアス特性を生かしたゼロバイアスによるA2動作とP-K合成出力段を実現していましたが、本機でもダンピングファクター向上の秘策としてP-K合成出力を採用しA2級動作と約50%のKNFを 利用することにしました。
■ 回路図
初段・ドライブ段は前作の50 single そのままにV−FETの2SK79と2SC1775によるカスケードで初段を構成し、6KR8A(T)を帰還管にした6KR8A(P)で構成する超3極管接続Ver.1で、イントラにはNC-14(タンゴ)を 1次・2次ともパラレル(1.25K)接続の1:1で使います。
超3極管接続をインターステージに採用したドライブ回路は トランスドライブとは思えないくらいワイドレンジが可能になりますが、 ドライブインピーダンスが低くなるのとOPTとの兼ね合いで高域にピークが現れやすいのでイントラの選択とドライブする球によっては注意が必要です。
今回の出力段はSTC(超3極管接続)による強力なイントラドライブにより2A3を駆動しますが、OPT(XE-20)をカソード側に配してSGタップを基準 (コモン)にイントラの2次側を接続することにより2A3には57%のKNFがかかります。
XE-20は2次側のタップを選ぶことにより負荷インピーダンスを選べますが、今回は高めの電圧をかけるので2.5Kと3.5Kの両方を試して見ました。
その結果得られる出力はほぼ同じで、3.5Kではダンピングファクター6を得られるものの音質は断然2.5Kが良くて、けれども2.5Kだとダンピングファクターが4.2と5を下回るので僅かに足りません。そこでなんとかダンピングファクターを5まで持っていくために思いついたのがオート・トランスの応用です。
3Kのインピーダンスが選べれば簡単でしたが、無いものは選びようがありませんので2.5Kと3.5Kの中間の負荷抵抗になるように2次側端子1−10から8Ω出力を取り出す2.5Kの設定のまま2次側も1次側巻線に直列に接続することにより 実際の一次インピーダンスを約2.8KΩにすることが出来ます。変則的なOPTの使い方ですが、これもイントラと自己バイアスによるメリットのひとつであり、グリッドとバイアスの基準点がフローティング に出来る為このような応用も可能になります。
但し、8Ω の2次側巻線を1次巻線の一部として統合してしまうとSGタップの位置も43%から46%くらいに移動します。
そして反対側SG-P間は57%から54%に減りますのでKNFの量も同様に減少しますが、ほぼ誤差範囲なので気にする必要はありません。
■ 電源回路
タンゴMS-160は元々2A3シングル用の電源トランスですので 約30ウン年ぶりに本来の用途に戻りました。
整流管には引き続き水銀入りのHX83を使います。
水銀整流管は電流を流す(電圧を印加)前に予めヒーターを点火しておいて内部の水銀を気化させなければならず、別にスイッチを設けたりタイマーリレー等を仕込んで時間差をつけてB捲線からの電圧を投入する必要があります 。
本機では電源投入後に水銀蒸気を確認してその蒸発行程を楽しみながらその後整流管の左横に儲けたプッシュスイッチにてリレーを自己保持してB電圧を加えます。
B電源のリターン回路にはソフトスタート回路を入れて有り、僅かな遅れを伴ったソフトに立ち上がる通電でコンデンサーインプットでの整流管の過電流保護としています。いずれは手動スイッチもタイマーリレーに置き換えるつもりです。
■ 基礎体力 (諸特性)Rev.4
最大出力 (ノンクリップ) 4.8 W 最大出力 (歪率5%) 5.2 W ゲイン 19.0 dB
高域カットオフ (-3dB) 70 KHz ダンピングファクター 5.0 (8Ω) 残留ノイズ 0.72 mV 2A3の標準的な動作点はEp 250V、Eg -45V、 IP 60mA に対して、本機ではEp 289V、Eg -56V、 IP 59mA とちょっとオーバーな動作設定ですが、 イントラによるA2級ドライブのおかげで少し大きめの出力が取り出せています。
イントラをSTCドライブした故に20〜30KHzにかけて僅かな盛り上がりがありますが、イントラを使ったアンプとしては 充分な広帯域になりました。
■ 音質傾向
Sovtek2A3 は以前の Sovtek 2A3 シング ルアンプの改善 についで2度目ですが以前は2A3を超3結にした、言わば直結アンプで実にストレートな表現のアンプでした。
今回はトランスドライブですのでちょっと趣が違っていて、トランスドライブらしいく図太い中低域とガシっと力強い高域がたかだか5W 程度の出力とは思えない 豪快な音質が得られました。
もしもつまらない音だったらサッサとイントラを外して以前と同じ直結の超三極管接続にするつもりでしたが、新たなイントラドライブの味が出せたように思います。
直熱管シングルアンプには出力管の個性を楽しむおもしろさがありますが、今回の Sovtek2A3 もまた素晴らしい音を楽しませてくれます。
Last update 1-Mar-2025