6JN6 CSPP

 Power Amplifier 

 by N氏

 since Apr. 2013
 

 

 

 

 


コレは拙作ではありません。 仲間のN氏が2013年に小型の水平偏向管6JN6で組んだマッキントッシュタイプのCSPPアンプです。

このアンプはH-K耐圧問題が具現化してダメになったEL34 CSPPに見切りを付け、EL34の代わりに水平偏向管には珍しくトッププレートではない6JN6が起用されています。

電源トランス(MX-280)とOPT RX-40-5(改) に変更はありませんが、スクリーングリッドへの電源供給にチョークを用いて擬似的にトリファイラ巻トランスのような効果を得ています。


具現化した問題

EL34をCSPPに使うにあたって当初からの懸念はH-K耐圧不足でした。

拙作6L6 CSPP(+P)の記事中にCSPPの欠点としてその懸念を書いていますが、カソードにプレートと同じ信号電圧が載るCSPPでは充分なH-K耐圧が必要です。
EL34はそのH-K耐圧が100Vでしかなく、長期の使用に耐えられるのかある意味実験でもありました。

そのEL34ですが、2005年より2012年までの約7年間稼働していましたが、2011年頃から電源投入時のウォームアップ時にポップノイズのようなものが出始め、その後次第にハム音が出るようになり、最後は盛大なハム音によって電源SWを切らねばならない状態になってしまいました。

結果的にH-K耐圧不足による絶縁破壊ですので、CSPPにはH-K耐圧の高い管種を選択するが必要があります。
ちなみに、KT-88, 6550, 6L6GC 等の出力管や水平出力管等のトランスレス球はH-K耐圧200Vですし、レギュレーター管の6336A 6080, 6AS7G等はH-K耐圧300Vです。


回路図

基本的にEL34CSPPの回路を踏襲していますが、大きく違っているのは水平偏向管特有であるプレート電圧の約半分前後のスクリーングリッド電圧を与える為に春日無線のシングル用OPT KA-1215を2次側解放のままチョークとして利用していることです。
バイファイラ巻ではないRX-40-5改と同様にカソードから電解コンデンサ47μを介してスクリーングリッドをブートストラップしています。

CSPPに限らず、多極管をネイティブ動作をさせるにはスクリーン電圧をカソード基準で与える必要がありますが、CSPPの場合互いのプレートからツェナーダイオード等による電圧シフトでもブートストラップ出来る為に動作としては有効なのですが、プレート電流の増大につれ電圧が下がってしまうのでその時点で必要にして充分なスクリーングリッド電圧・電流を供給出来ず出力が伸びません。
一方、スクリーンへの電源供給をプレート回路とは別にして良好なレギュレーションを確保すれば大出力を取り出すことが出来ます。このような理由でスクリーンへの電源供給は独立している方が有利ですので特に水平偏向管の場合はトリファイラ捲きトランスが必要不可欠です。

しかし、2013年4月現在CSPP用トリファイラ捲きOPTは市販されていませんので、今回のチョーク利用法はトリファイラの代用として使える極めて有効な選択肢と思います。
春日OPT KA-1215は1次インピーダンス12KΩで、センタータップ(3KΩ)を持っており、CSPPのスクリーンチョークとして利用するにあたってその手頃なサイズと相まってピッタリの仕様です。

こうすることでプレート、カソード、スクリーングリッドの各巻線が交流的にパラレル接続され擬似的にトリファイラ捲きのOPTと同じ動作をさせることが可能になります。


諸特性

 最大出力(ノンクリップ)  38.6W
 最大出力(歪率5%)  43.3W
 クローズド・ゲイン  24.4dB
 高域カットオフ(-3dB)  150KHz
 ダンピングファクター  10.1(8Ω)
 残留ノイズ  0.5mV

プレート損失17Wと決して大きくない球ですが、ツボに嵌った動作なのかなんと以前のEL34よりも大出力を取り出せる結果となりました。


■ 音質傾向

かつてのEL-34が色あせてしまう程にパワフルかつ緻密な音質で暫く唖然としてしまいました。


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Last update 2-Jun-2013