フルレンジ 球形スピ ーカーシステムの製作 since Jan 2014.

 

スピーカー の基本はフルレンジ一発。

マルチウェイのリファレンスのためにも音の確かなフルレンジが必要だと常に思ってはいたものの、スピーカーに限らず何事もきっかけや出会いがないと始まらないものです。

フルレンジ1本で全てを満足出来るような万能なユニットは見あたらないけど国内外に音の良いユニットは少なからず存在するので、新リファレンスとして使えるスピーカーを目指して製作に取りかかりました。
 

★末尾に音圧伝搬シミュレーション動画を掲載しましたので是非ご覧あれ。


■ フルレンジの理想は?
電気音響トランスデューサーとしてフルレンジスピーカーに要求される項目をいくつか挙げてみましょう。
  • 大き過ぎない適度な面積の振動板
  • 剛性が高く、質量は限りなくゼロに近い振動板
  • 完全なピストンモーションで駆動
  • 周波数に拘わらずインピーダンスは常に一定
  • 特定の周波数で共振しないこと
  • 可聴全帯域をカバーする広い周波数レンジ

このような事柄が理想のフルレンジの条件として挙げられます。
しかし、文字にするのは簡単でも実際これらを完全に満たすのはいかなる形式(方式)のスピーカーでも困難(無理)です。

低い周波数まで音圧を得ようとすると振動板の面積は大きくしたいし、大きくすると分割振動が出てしまうので、今度はそれを防ぐ為に剛性をあげると振動板が重くなる。 重くなると振動板の追従性が悪くなり高域レスポンスが悪くなる。 逆に小さく軽い振動板だと低域が 足りない、と言った具合に相反する要素がワイドレンジを阻みます。 にもかかわらずフルレンジと呼ばれるユニットには大小様々なサイズがあり、それぞれ一長一短があるので簡単に答えは見つかりません。 それ故にエンクロージャーとの整合を考えながらあれこれ迷いながら選択するのも自作派には楽しい時間かも知れません。

フルレンジのメリットはなんと言ってもマルチウエイのような時間軸の不整合が起きないことと、点音源による定位の良さです。

理想を追求した例として TIMEDOMAIN 理論に基づいた ECLIPSE TD シリーズ スピーカーが富士通テンより発売されていますが、そのコンセプトとコンストラクションは大いに共感させるものがあり、一度はその音を聞いてみたいと思わせるスピーカーです。
しかし、独特でコンパクトな外観ながら購入するには大きな決断を要する結構な価格設定ですので、誰もがおいそれと手が出せるモノではありません。
また、そのせいか所有している知人もおらず、店頭で展示かつ試聴出来るようなところも身近に無く、これまでその音を聞くチャンスに巡り会いませんでしたので今でも何か胸の奥につかえたままになっています。
故に世に出回る数がそれほど多くないのかも知れませんが、ヤフオク等でもタマ数は少なく、出品されてもかなりの高値で落札されるようなので私の手元に来ることは暫くなさそうです。  ま、想像では良い音が して当たり前(?)のスピーカーだと思いますが、フルレンジ故の欠点が全て解決された万能スピーカーではありませんのでそこは頭に入れておかねばなりません。

世間にはいろんなスピーカー用エンクロージャー(ボックス)があり、製品として販売されていたり自作されていますが、ユニットを入れるエンクロージャーは頑丈かつ内部で定在波が発生しないものが望まれます。
平面バッフルや密閉、バスレフ、バックロードホーンやTQWT、TLS等と種々の方式がありますが、しばしば問題になる定在波の抑制を考慮すると球形エンクロージャー が選択肢として挙げられます。

球形は一般的な箱形に比べ、バッフル面での反射・回折が起きないメリットに加え、内部に平行な対向面が無い故に定在波が発生しないことや強度的にも優れる等、箱形には無い特徴を持つ スピーカー用エンクロージャーとして一つの理想型です。 しかしながら、素人が製作するにはハードルが高く、容易ではありません。 故に世間にはありそうでもなかなか無いものです。

かつてはササキアコースティック(佐々木硝子と言うガラスメーカー )がガラス製の透明な球形エンクロージャーを用いたSPを製作販売していましたが既に過去のものですし、ガラスとなるとその扱いや加工性の問題もあり、素人がおいそれと簡単に手を出せるものではありません。

でも、世の中やはり球形の良さを理解してチャレンジする人は少なからず存在し、本業はオーディオ関係ではありませんが(株)オリジナルボックスが球形エンクロージャーを企画販売して います。

今回巡り会ったのも縁あってのものですが、タイムドメインのようにトコトン凝ったものでなくともフルレンジの良さを十二分に発揮出来るFRP製の球形エンクロージャーは ユニークで価値ある存在です。

現在この会社では3種の大きさの球形エンクロージャーを販売していて、昨年(2013)は妙高オーディオ倶楽部の発表会にてJBL-LE8Tを使った作品例が発表されていますが、今回はその3種の中から真ん中の大きさのQ-280( 直径280mm、容積11L、材質はFRP)を使って10〜14cmあたりのユニットで組んでみます。

このFRP製の球体は重量は軽くて非常に剛性も高いのですが、販売されている状態はFRPを成形加工したままの素材であり、エンクロージャーとして使う為には自分で穴明けや塗装等の加工をして、吸音材、バスレフポートやSP端子等の部品が別途必要なのでご注意 !

しかし、必要な部材はコイズミミクセル等のweb通販でも 今や簡単に手に入れることが出来ますので心配には及びません。

その他に小型のQ-200(直径200mm、容積4L)と大型のQ-440(直径440mm、容積22L)がありますのでこちらを参照

 

球形エンクロージャーに興味のある方は(株)オリジナルボックスにお問い合わせ下さい。

■問い合わせ先:株式会社オリジナルボックス
■所在地:神奈川県厚木市山際275−2
■電話番号:046-246-1811
■FAX番号:046-246-1790
■URL:http://www.originalbox.co.jp/index.html
■E-mail:info@originalbox.co.jp
 

※ FRPとは? Fiber Reinforced Plastics の略で型枠に添って硝子繊維にプラスティックを浸潤させて作ります。

主な用途には小型船舶の船体や特殊車両の内外装、ユニットバス等に多用されます。
電気電子分野ではガラスエポキシ基盤(通称ガラエポ)がその代表的な例です。
遊園地の乗り物等はたいていFRP製ですね。


■ ユニット選定
さて、肝心のユニット選びですが分割振動によるクセのある個性音が出にくく、ある程度低域も出せる大きさとして12〜14cmクラスの口径から選びます。

現在入手出来る12〜14cmユニットは海外製も含めて沢山の種類がありますが、今回はFOSTEXSI-1UNという以前から興味のあったHP振動板の13cmユニットを 手に入れました。(残念ながら既にSOLD-OUT)

このユニットは鹿島建設が提唱する『明聴ネットTM』というホール音響システムの天井埋め込みスピーカーSI-1として用意されたものらしいです。
しかし、顔つきはまるであのNHKのモニターとして採用された
FOSTEXのリファレンス・スピーカーRS-N2のスコーカーに激似、またそのフレームも含めてパワード・モニターNF-01Aのウーハーと瓜二つで あり、エッジや振動板は同じものと思われるし、それだけでも素性の良さが窺い知れます。
実際のところ詳細は不明ですが、写真で見た限りではマグネットの防磁カバーがあるかないかだけの違いのように見えます。


 【FOSTEX 13cm HP型フルレンジ】
  
  インピーダンス…4Ω
  最低共振周波数…100Hz
  再生周波数帯域…100Hz〜20KHz
  出力音圧レベル…89dB/w(1m)
  実効振動半径(a)…5cm
  連続許容入力…34W MAX:75W
  バッフル開口径…124
  重量………………1.31Kg
 

周波数特性を見るとその最低共振周波数(f0)が100Hzと高めであることからフルレンジと言うよりもミッドレンジとしての適正の方が高いと思われます。

本体を手に入れてから問題がひとつ判明。 なんと、よく見ればインピーダンスが4Ωではないですか!

ハナから8Ω しか想定に無かったのでこれは誤算。
4Ω 端子のあるアンプか半導体アンプかを選ぶスピーカーになってしまいます が、マッチングトランスを用意して4Ω→8Ω変換で使える様にします。
 


■ 球形エンクロージャーの加工
オリジナルボックスの球形エンクロージャーは肉厚約3mmほどのFRPで加工は金属や木材よりも楽ですが、グラスファイバーが使用されているので作業には革手袋等を着用しないと後でチクチクする事になるので要注意。

※電動工具を使う場合は必ず作業性の良い革手袋や保護メガネを使いましょう。
 
つまらない怪我をしては楽しいハズの工作が台無しになってしまいます。

・取付穴が120mmなのでユニットに合わせて広げる為に125mmの円を油性ペンで書き、その周りをマスキングテープで養生します。

・ジグソーでゆっくりと慎重に線に沿って切り取ります。
2個目はジグソーではなくディスクグラインダーで削りましたが、慎重にやればディスクグラインダーの方が比較的に楽に削れます。

・今回バスレフダクトはSP背後ではなく、スピーカー軸から90度直角となる方向に取り付けるので、ホールソーで51mmの穴を空けました。

・バスレフポートは最初からある背面の穴に取り付けるのであれば此処は平面になっているのでなにも問題無いのですが、今回は新たに空けた穴の曲面に取り付けるのでフランジ部分をヒートガンで炙って曲面に馴染ませ ています。(厚手の革手袋をしないとやけどしますのでご注意!)
 


■ 塗装
白い球体にSPユニットを取り付けると見た目にまるで大きな目玉の親父みたいです。
いつも見られている様な異様な感じがするのでエンクロージャーを白以外の色に塗装します。

・先ずは接合部分表面の荒削り部分を500番程度の耐水ペーパーで水研ぎします。
 これは塗装後に継ぎ目や切削の痕跡を出さない為にも必要な工程です。

・ 塗装中の写真は撮り忘れましたが、球体なので一気に全体を塗るのではなく前後を2回に分けて塗装します。その際、極力厚く塗らないようにさらに複数回に分けてスプレーし ますが、曲面故に塗料が流れて垂れやすいので塗った直後は本体を持って腕を回して本体を適度に回転させながら乾燥を促します。

当初は単純に黒にするつもりでしたが、乾燥後にフィルム状に剥がすことの出来る自動車ホイール用スプレー

【FOLIATEC(フォリアテック) 剥がせるスプレーフィルム カラー:ガンメタリック 内容量:400ml】を選びました。

これなら気が変わってもキレイに剥がすことが出来ます。
 


■ ユニット、端子、バスレフポ−トの取付
加工&塗装したエンクロージャーにバスレフポ−トと端子を取り付けます。

・バスレフポートは PA50 伸縮式バスレフポートで内径50mmです。本来SPユニットの背面の穴を利用して取り付けるように設計されていますが、今回はスタンドをバスレフポートの一部として使う為、 調整用伸縮部分をスタンドに固定し、首の部分を差し込むカタチに利用します。

・バスレフポート用に新たに穴を空けた為、用意されていた背面の穴は塞がなくてはなりません。ここには市販の丸形SP端子を付けます。
カビではなく塗料の飛び付きです。

・バスレフポートと端子を取り付けたら、吸音材を入れます。
 球形エンクロージャーでは定在波の発生はありませんが、バスレフなのでエンクロージャー内部の中高音はしっかり吸音する必要があります。

 写真のミクロンウールを4枚に切り、一つに2枚づつ入れました。

・今回ユニットの取付にはエンクロージャー側にM4のタップを立て、M4ビスを利用しましたが、写真のような化粧ナットをフランジの裏から接着剤で貼り付け れば楽ちんです。

また、木ねじや鬼目ナット利用する場合はフランジの裏面に堅めの合板の切れ端を加工してボンドで貼り付ければ充分な強度が得られます。
 


■ スタンド
スタンドとして用意したのはSONYの5.1chサラウンドシステムのフロント用スピーカーSS-TS550
これは上部のスピーカー部分とスタンドが切り離せるタイプで本機では下側のスタンドのみを利用。(リヤ用SS-RS550も同様に利用可)

・元から付いているプラスティックのマウントは取り外し、内蔵のSPケーブルも取り去る。
 最初はこれを流用することも頭を過ぎったが元々のスピーカーは重量が軽く、チープなワンタッチ連結構造の強度は不充分と判断。

・伸縮式バスレフポートPA50の伸縮側のパイプに2mm圧のゴムシートを適当な大きさに切って重ね、スタンドにきっちり嵌る縦横の幅に調整。

・スタンドへの固定はシリコン・シーラントにて隙間を埋めて一晩固まるのを待つ。
 これにて85cm高の自立スタンド完成。
 


■ パーツ・リスト
品名 数量 Description Supplier
Q-280 2 FRP製 球形エンクロージャー Original Box
SI-1UN 2 Fostex 13cm フルレンジSPユニット コイズミ無線
CS-023E 1 丸形SP端子 (x 2) コイズミ無線
吸音材 1 ミクロンウール 50x110 コイズミ無線
PA50 2 伸縮式バスレフポート50mm ミクセル
M4 ビス 16 M4-15 ナベネジ Black ホームセンター
M4 皿ビス 8 M4-15 皿ネジ ホームセンター
M4 ナット 16 M4 ナット ホームセンター
SS-TS550 2 SONY サラウンドスピーカーのジャンク ハードオフ
ゴムシート 1 2mm厚 ダクト固定調整用 ホームセンター
両面テープ 1 ゴムシート貼り付け用 ホームセンター
シリコン・シーラント 1 一般用シリコン・シーラント又はRTVゴム等 ホームセンター
スプレー塗料 1 FOLIATEC(フォリアテック) 剥がせるスプレーフィルム カラー:ガンメタリック 内容量:400ml カー用品店
線材 適量 内部配線用 手持ち

※ 残念ながらFostex製ユニットSI-1UNは既にSOLD OUTでもうコイズミ無線から入手することは出来なくなりました(T_T)。
 


■ 完成
スタンドに球体をセットすれば高さ113cmの球形スピーカーの出来上がり。

右の写真ではレンズ収差のせいで頭でっかち&歪み+足下が貧相に見えるが、実際の見た目のバランスはそう悪くない。

スタンドのベース部分でバスレフポートを通って下に降りてきた音が底の円錐にあたって拡散するようになっているが効果の程はいまいち不明。

台座部分は直径25cmで28cmの球体が上に載ってることからするとやはりちょっと小さめ。

弱冠トップヘビーなのでこの部分にも錘でもセットして安定化を図りたいところだが、なかなか良さそうなものが見つからず気長に捜すことにします。
 


■ 試聴
さて、久しぶりのフルレンジしかもFOSTEXのユニットの音はどんなもんでしょう?

変な表現ですが『期待を裏切るイイ音』が最初の印象です。

このユニットはさすがにNHKモニターの血統です。エンクロージャーの容積もさることながら元々ユニットのf0が100Hzと高めなので低音は期待出来ませんが、低域の量感以外はまるでハイエンドSPです。Kailas 7やマルチアンプ駆動のメインSPに総合的に敵わなくてもかなりの部分で迫るものがあり、一部は凌駕してさえいます。高域も充分以上に出ていてトゥイータ の必要性も感じません。
逆に、フルレンジ故の自然さと点音源の音場によるしっかりした音像定位はマルチウェイでは得られないもので却って新鮮に聞こえます。

その音質の立役者、球形エンクロージャーのメリットですが、

  • 平面的なバッフルで起こる様な反射・回折・振動の輻射が無い。
  • 球形状でその剛性の高さ故にいわゆる箱鳴りが殆ど無い。(特注で肉厚仕様もあります)
  • 内部に対向面が無いので定在波の発生・輻射が無い。

と言った具合に普通の四角いスピーカー・ボックスで起こる様々な箱に起因する不要な付帯音の発生が無く、ユニット本来の音と性能を引き出せることが高音質の理由で もあります。

いわゆる濁りがなく非常にクリアで一音一音の粒立ち感が良く、音が塊になって飛んでくるような空気が纏まって動いている印象を受けます。
これは時間軸の整合がとれていないマルチウェイスピーカーではなかなか感じられない領域だと思います。

本球形スピーカーの欠点は低域の量感不足と能率が高くないことですが、ユニットの性格からして元々低域は弱いのでバスレフでも物足りないのは致し方ありません。 バックロードやTQWT等であれば低域はかなり補えそうですが、球形エンクロージャーに見合った丸い断面構造で作るのはさらに難しくなりそうです。 或いは長岡式スワンのようなバックロードが良いのかも知れませんがあの箱を仕切った構造のホーンはいまいち好きになれません。 あとは能率が低め故にアンプは10W以上あった方が鳴りっぷりが良いようです。

この球形スピーカーの性格上大編成のオーケストラ等には向きませんが、主旋律が中域メインになる単独の弦楽、木管、ギターやピアノ、ボーカルではその本領を遺憾なく発揮し 、低域は多少弱くともクロスオーバーや余分な付帯音がないメリットに加え、点音源故の正確な音像定位はリファレンスと成り得る音楽再生をしてくれます。 もし、これにサブウ−ハーがあれば一気に不満は解消するかも知れません。

もちろん楽曲にも依りますが、暫くこれで聴いた後では箱型エンクロージャーから出る付帯音が気になってしまい、音楽に集中出来なくなってしまいました。

本機にはスピーカーのあるべき姿の基本があります。
マルチウェイを構築するにもしっかりした音の基本を理解・確認すべきで、フルレンジの音質と大きくかけ離れたような音を再生するマルチウェイ・スピーカーには重大な 問題が潜んでいます。
そう言った意味で良いリファレンスが無いとスピーカー作りは迷路に入りやすく出口を見失いかねませんのでご注意。

かくいう小生も現行のマルチウェイSPにある問題点を再確認したのでやはりリファレンスの為す意味は大きいと言わざるを得ません。
現在使っている自分のスピーカーシステムに不満がある人、或いは不満がない人でも是非フルレンジのリファレンスSPを持つことをお奨めします。スピーカーを基本から見つめ直す良い機会になること請け合いです。

話は前後しますが、ECLIPSE TD シリーズの音も恐らく似たような特徴を持ったものだと想像に難くありません。
この球形スピーカーは ECLIPSE TD シリーズのように凝りに凝った作りではありませんが、やろうと思えばもっと工夫出来ることもありますし、基本はほぼ同様ですのでFRP球形エンクロージャー を使えば本機のような優れたコストパフォーマンスのフルレンジ・スピーカーシステムの製作が楽しめます。

最新ユニットに限らず、名機と呼ばれるヴィンテージ・ユニットでもFRP球形エンクロージャーならばユニット本来の性能を引き出せることでしょう。
 


■ 戯れ言

改めてFOSTEXのユニットにはびっくり。

実のところそれほどの音が出るとは期待していなかったのですが、HP振動板ユニットはさすがにNHKモニターに選定されただけのことはあります。

FOSTEXと言うと未だに昔のFEシリーズの紙臭い音のイメージが頭から離れていないので最初はヨーロッパのユニットから選ぶつもりだったのに、偶々コイズミのwebでHP振動板のユニットが目に止まったので見入ってしまいました。しかも手頃なサイズで値段も安いので思わずポチッと...してしまったのでした。

SI-1UNは既にSOLD OUTですが、まだ同じ顔つきのHR振動板10cmユニット(M100HR-W)と16cmのウーハーユニット(FW168HR)があります。

分割振動由来の個性音を排除すべく大口径を避けて13cmのユニットを選びましたが、このタイプの振動板ならばもっと大きくても 分割振動による個性音はなさそうです。

HR振動板(HP振動板の進化型)はその特徴故にワイドレンジが可能なので普通のコーン振動板では分割振動で個性音が出やすくなる中口径以上のユニットで もその威力が存分に発揮されるように思います。(40cmウーハーW400AHRもありますが...高いです(^^;)

なので俄然FW168HRに興味が湧いてきました。ウーハーと言いながらもかなり高域が伸びていますのでフルレンジと言っても良いくらいです。
これとQ-440の組み合わせなら低域の不満もかなり解消するのではないかと妄想をふくらませています。

しかし、まだその前に本機でやれることが色々あるのでぼちぼちマウントの改善やデッドマス等を試してみようと思っているところです。
 


■ 安定化?

頭でっかちの状態では地震等で倒れる可能性あるので対策を施しました。

適当な形状と重さの錘を捜しましたが、なかなか良いモノが見つけられせんでしたが、春になって漸く適当なモノが見つかりました。

それは屋外に設置するパラソルや幟につかうスタンド(直径40cm、重量15Kg)です。
これのポール固定部分をそのまま利用することにしました。
オリジナルの底板(直径25cm)を外し、バスレフポート兼スタンド柱の背面に穴を空けてパラソル固定用ネジをそのまま使えばガッチリと固定出来ます。

右の写真で新旧台座を比較すればその大きさと重量感、以前よりグッと増した安定感を感じて貰えるかな(^^;)
 


エンクロージャー内部音圧シミュレーション動画

バスレフの箱形エンクロージャーと同じくバスレフの球形エンクロージャーの内部で発生する音圧の変化をシミュレーションした動画です。(注:音は出ません、動画のみです(^^;)

エンクロージャー内部で反射が起きるのは1/2波長以下になる周波数から上の周波数です。
音波の速度は340m/sですので1KHzの1/2波長は17cmで、500Hzで34cmですのでそれ程大きくないエンクロージャーでも数百Hzの周波数から内部で反射や定在波の発生が起こります。

※ブラウザーで再読み込みをすれば一斉に再スタートします。

1KHz 音圧伝搬シミュレーション

 

箱 形     vs     球 形

 

10KHz 音圧伝搬シミュレーション

 

箱 形     vs     球 形

いかがですか? 

ユニットから発生した音圧は方形のエンクロージャーでは音源から不揃いな距離の反射面によって複雑な伝搬と反射を繰り返し、元の信号には無い新たな音を合成してしまいます。
これがいわゆる濁り(付帯音)となってバスレフポートやユニットの振動板を通してリスナーに伝わってしまうのです。

四角い箱の中では複雑な事象が起きているし、これを見ると単純に『定在波の発生さえ抑えられれば大丈夫』というような安易な判断は危険であることが判ります。


対する球形エンクロージャーの様子を見れば一目瞭然です。
反射が全く無い訳ではないですが定在波にはならず、方形エンクロージャーのように複雑な伝搬をしないので新たな濁り(付帯音)を付加することにはならないようです。
しかし、定在波が発生しないから吸音材がいらない事にはなりません。
当然ユニット背面のエネルギー(音圧)と時差で干渉が起こるのでエンクロージャー内部は充分に減衰(吸音)させる必要があります。

さらによく見ると球形エンクロージャーであってもエンクロージャー内部にはバスレフポートでさえ無い方が良さそうに見えます。

 


 Back to SP 


Last update 15-Aug-2014