Bipolar-TR 2N3055 CSPP Power Amp Unit since Oct. 2003


   


第2弾 は金田スタイルでもおなじみのバイポーラ・トランジスタの2N3055です。

2SJ18CSPPを応用し、温度補償を加えた回路構成です。

NPNなので回路全体がひっくり返っています。(上條さんの言葉を借りるとコンプリ返し) 金田スタイルと比べても1段少ないぶんシンプルです。 


回路図 (2003/10/25)

温度補償には苦労しました。 私には計算で温度補償を割り出すことなんか出来ませんのでカットアンドトライしかありませんが何事も経験が必要です。
バラックセットでは2N3055のREに0.47Ωを入れて恐る恐る温度補償の実験を開始しましたが出力が12.5Wしか出ず、実用的な0.1Ωに変更したところ実験調整中にアイドリングが急激に増えて暴走、実験を繰り返すうちに3ペアの2N3055が犠牲になりました。
当初は定電流回路A1015のベース電圧固定にツェナーと温度補償用ダイオードを直列に入れてダイオードを2N3055に熱結合しましたが、2段増幅でゲインがあまり大きくないだけに定電流性が良いとまるでダメ。
ダイオードを貼り付けるより見てくれが気に入りませんが、J-FETの2SK30Aを熱結合して定電流のバイアス電流を調整する様にしてなんとか補償出来る様になりました。
ここでもK117の様なちょっとGmが高くIDSS大きめのFETをゲート・ソースをショートで使うとダメで、Gm及びIDSSが低いK30Aの方が適役です。
差動の定電流回路にA1015ではなく熱結合したK30Aをそのまま使う手も考えられますが、アイドリング調整用RSが必要なので、こうなると定電流性が増し温度補償が充分効かなくなります。


こちらもヒートシンクの裏側に白色高輝度LEDを取り付けています。
ヒートシンクはJ18ユニットと同じものを使用しましたが、2N3055はTj =200℃なので余裕がありますがアイドリングを0.25Aに抑えています。


基礎体力 (アイドリング電流 0.25A)

 最大出力  25W
 ゲイン  25.2dB
 高域カットオフ(-3dB)  440KHz
 ダンピングファクター  9.09(8Ω)
 残留ノイズ  0.19mV

他のユニットに比べると出力は若干低いですが、普段10W程度の管球アンプで聞いている者にとっては十分な数値です。
ゲインは怪しくもJ18とピッタリ一致しました(もちろん狙ってのことですが)。

高域カットオフは440KHzで270KHz付近がほんの少し盛り上がるなだらかなピークが観測されました。


■ 問題点

初段の電流が少ないため出力段をフルスイングするまでドライブ出来ていません。 温度補償に時間を費やした為、未だ消化不良です。
初段の負荷抵抗を下げて電流を増やせば簡単だがゲインが下がってしまうし、J18ユニットの様に高電圧を掛ければ今度はアイドリングの安定化が難しくなりそうです。


■ 音質傾向

流石と言うか、あの金田先生の目に適っただけのことはあるデバイスです。
明るめのキャラクターですが、予想外にジェントル。高域の粒立ちが綺麗でオーケストラが楽しく鑑賞できます。


  フルスイングへ向けての変更(その1)

変更した回路 Ver.2 (2003/11/21)

 

上條さんが良いヒントをくれたので初段の電流を増やすためにLEDの電圧分約1.9Vマイナス側に引っ張ってみました。
これで初段J76に以前の約3倍の電流が流せる為より大きなドライブ電圧が稼げます。
それに併せて定電流回路はA1015のREを2.2Kに固定し、ベース電圧を可変するように変更しました。
この方がK30Aの温度変化による電流変化をより反映できるようになり、温度補償は却って効き過ぎるくらいです。
VRは5K程度が適当ですが、手持ちに10Kしかなかったので4.7Kをパラに接続しています。
最初からプラス側・マイナス側に倍電圧電源を用意していたおかげで自由度が高く、躊躇無くこんな回路も試せます。


変更後の基礎体力 (アイドリング電流 0.25A)

 最大出力  50W
 ゲイン  26.2dB
 高域カットオフ(-3dB)  440KHz
 ダンピングファクター  14.5(8Ω)
 残留ノイズ  0.22mV

今回の変更でほぼフルスイングまで持っていくことが出来、最大出力は50Wにも達しました。
J76の動作点がよりYfsの大きいポイントに移動したことによりゲインも1dB上昇、それに伴いダンピングファクターも向上しました。


■ 問題点

パワーは満足できるレベルに達しましたが、フルスイング近くではやはり平衡性が崩れて上下非対称の2次歪みが出ます。


  フルスイングへ向けての変更(その2)

 

左は初期の8pinUSプラグを使っていたときのものでアンプユニット側に入出力がある。右は11pinプラグに変更後にヒートシンクを2つにした。

2N3055は前後ヒートシンクの下側で、上側に付いているパワーTRはやっぱりダミー、K30を熱結合している方は裏側。
こちらもアイドリング電流を 0.25A から 0.3A に増やしました。


変更した回路 Ver.3 (2003/12/21)

やれる所までやってみようということで、金田スタイル完全対称回路のドライブ段のように定電流回路で引っ張ってみました。
270KHz付近のピークが気になった為、D78のC−B間に100PFを挿入し高域レスポンスを下げました。


変更後の基礎体力 (アイドリング電流 0.3A)

 最大出力  52W
 ゲイン  26.2dB
 高域カットオフ(-3dB)  250KHz
 ダンピングファクター  15.4(8Ω)
 残留ノイズ  0.27mV

回路変更と同時にこちらもヒートシンクをサンドイッチにしてアイドリングを増やした。

初段の負荷を2.2Kから1.4Kへと小さくしたにもかかわらず、J76のアイドルが増えることによりさらにYfsの高い方向へ移動してゲインはほぼ変わらず、ダンピングファクターは僅かに上昇。
最大出力付近での非対称性が若干改善し、クリップポイントが僅かに上昇して出力は2W程大きくなりましたが、その波形の歪み方に大差はありません。


  Ver. 4

変更した回路 Ver.4 (2003/12/30)

シンプルを基本とするCSPPに大げさな回路は似合いません。
バイアス供給の定電流をやめ、Ver.2のLEDによるバイアス供給に戻し、初段負荷抵抗はさらに小さくし、高域補償はVer.3を取り入れたVer.2.5とも言うべき回路になりました。

差動のバランス調整トリマー50Ωの摺動子から両端に22Ω2本を接続して抵抗値を絞り調整をブロードにしました。


変更後の基礎体力 (アイドリング電流 0.3A)

 最大出力  50W
 ゲイン  26.2dB
 高域カットオフ(-3dB)  440KHz
 ダンピングファクター  15.6(8Ω)
 残留ノイズ  0.28mV

初段の負荷を下げても電流をさらに増やした為、ゲインは変わらず、ダンピングファクターもほぼ同じ。
アイドリングの安定度も高域の位相特性もこちらの方が良く、カットオフポイントも上昇しました。


■ 雑感

初段負荷抵抗を下げていってもJ76の動作点が移動して思ったようにゲインが下がらず、一時はダンピングファクターが22と大きくなり過ぎて優等生的音質になってしまいしたが、ようやく落ち着きました。
当初2.2Kでしたので半分以下になってもId増加によるゲイン上昇の方が上回った事になります。と言う事は、Ver.1のままで負荷抵抗を小さくしてもそれなりのゲインが確保出来ていたかも知れませんし、フルスイング出来ていたかも知れないと思うとちょっと心残りです。まあ気が向いたらやってみましょう。


  Ver. 4+ ?

いまさら何を?と思われるかも知れませんが、禁断?の "RE" レスにチャレンジしてみたくなりました。TRの暴走と破壊は覚悟の上です。
バイポーラTRでは熱暴走の回避や寄生発振の防止、安定性確保の為にエミッタに抵抗を入れるのが常識です。

本機もこれまでREには0.1Ωを入れていましたが、先達によるとバイポーラTRの場合は音を劣化させる因子としては決して小さくないようです。金田先生の製作記事でも電源電圧が低ければREなしで構わないと何処かに書いていた記憶がありますし、上條さんに至ってはREを無くすために労力を惜しまず徹底的に対策(水冷等)を施されたアンプを発表しています。

どう見ても無いと拙いと思われるREを取ろうとするのは何故かと言われれば、このユニットの回路のままだとJ18やSuperSITには敵わないのと、上條さんがあそこまでするのですから自分でもその音を確かめずにはいられなくなった訳です。さらにはMOS−FETユニットの音質がソースフォロワーにより弱冠向上した為、バイポーラTRアンプユニットの存在価値が薄れてしまうからでもあります。

市販品にはまだまだバイポーラTRを使ったアンプが沢山存在します。MOS−FETを使った方が温度補償なしで簡単に高性能なアンプが出来るのですから、生産性や数値特性が良ければ市販アンプはMOS一色になってバイポーラTRは淘汰されるハズです。
ところが、まだまだバイポーラTRのアンプは存在します。その理由は音質にメリットがあるからこそだと思われます。

と言うことで、バイポーラTRの限界をみるべくREを取り去ってみます。実際にはまだ電流を測定する必要があるのでコレクタ側へ移動させます。
ここでご注意!これを読んでいる方は安易にマネしないでください、2N3055を飛ばす可能性は非常に高くなりますのであくまで自己責任で判断してください。しかも、飛ぶのはTRだけではありません。通常本機に於いてパワーTRの故障モードはC−B間ショートですので、ドライバ段のエミッタ抵抗は燃えるし、下手すりゃ貴方の大事なスピーカーをも飛ばす可能性が有ることを決してお忘れ無く。


変更した回路 Ver.4+ (2004/10/17)

さて、安定性をみるためにほぼ毎日BGMに数時間音楽やFMラジオを流しています。

アイドリングは様子を見るために200mAに抑えてありますが、電源を入れた直後は500mA前後流れてしまいます。その後徐々に温度上昇と共に下がって行き、暫くすると安定し、暴走する気配は無いようです。
但し、一度だけ右チャンネルからハウリングの様なかすかな発振が出ました。原因はこのユニバーサルCSPPアンプの宿命とも言うべき11Pソケットの微妙な接触不良に因るものです、一度ユニットを抜き差ししたら発振はピタッと止まりましたのでピンは常々綺麗にしておくことが寛容です。(金メッキが欲しい!)

肝心の音質は?....確かに一歩前進したようです....けど、これでもまだSIT(V-FET)やSuper-SITには敵わないというのが正直なところです。

...つづく...のかなぁ?


Last update 31-Oct-2004