Super SIT Connection 2SK312 CSPP Power Amp Unit since Dec. 2003


 

   


第4弾 は当初の目的であった”超SIT接続” 2SK79・2SK312 CSPP です。

超SIT接続とは、真空管でおなじみの超3極管接続の様に3極管特性のV-FET(SIT)に5極管特性のMOS-FETを組み合わせてパワーV-FET(SIT)を実現するものです。

2003年末現在でも未だに入手可能な V-FET(SIT) 2SK79 で MOS-FET 2SK312 をドライブし疑似的にパワー V-FET(SIT) をでっち上げました。

超3極管接続の生みの親である上條さんも真空管で試す前に V-FET と MOS-FET で試したのが出発点だったそうです。

真空管による超3極管接続の場合は入力を高インピーダンスに保って電流ドライブしなければなりませんが、5極管の gm に相当するMOS-FETの Yfs は桁違いに大きいのでそのままダーリントン接続で良いそうです。

K312は MOS-FET で実験したJ116のコンプリメンタリー相棒です。


超SIT接続の検討

規格表によるとK79の gm は14mSで gos が0.5と言うことは rd は2KΩになり、μ は28と算出できます。

これで駆動するK312の Yfs は2.5Sですので充分な値と言えます。
とは言えFETのダーリントン接続で両素子のパラメータがどのように効いてくるのか直ぐには理解出来ませんでした。
真空管による超3結のように100%帰還にすれば rd は11.2Ω程度になりそうですが、ダーリントン接続だとK79のソース抵抗を含むので、実際のμは半分以下になると考えられるし、両素子の実際の動作点での特性はデータシートの数値とは違ってきます。

K79 K312  K60/J18  ※ K79 * K312 SITもどき
μ 28 ※ 28?
gm 14mS 2.5S 250mS ※ 2.5S?
rd 2KΩ 16Ω ※ 11.2Ω?

※これは全くの希望的予測値でしかありません。実際の所は組んで実測するのが確実です。


回路図 (2003/12/29)

J18ユニットの回路をコンプリ返したと言うよりは2N3055ユニットに似た構成になっています。
K79のバイアスをツェナーで固定したことでPSDCは省略してしまいました。トロイダルトランスのおかげで電源のレギュレーションは良いのですが、電源ライン1次側での変動にも素直に反応しますのでやっぱりPSDCは入れるべきです。

これまでのユニットでも差動のバランス調整トリマーに50Ωでは大き過ぎ、調整がシビアだったので摺動子から両端に22Ω2本を接続して抵抗値を絞り調整範囲をブロードにしました。


 

MOS-FETのゲート配線を延ばしたくなかったのでK79をK312の直近に配置しました。ケースに組み込む前にバラックでテスト。


J18ユニットでは青でクールなイメージにした高輝度LEDのイルミネーションですが、本ユニットでは情熱の赤としてみました。(イマイチですね)


■ 最初の失敗

差動の定電流に2SA1015を温度補償もせずに単独で使ったのが間違いでした。ケースに入れて温度上昇するとそれにつれてアイドリングがどんどん増えて気づいたときにはアッチッチで既に遅し、試聴中にLチャンネルが逝っちゃいましたので定電流を2SJ103に置き換え、ツェナーにも温度補償ダイオードを直列に入れました。


基礎体力 (アイドリング電流 0.3A)

 最大出力  33W
 オープン・ゲイン  45.7dB
 クローズド・ゲイン  25.3dB
 高域カットオフ(-3dB)  1250KHz
 ダンピングファクター  17.0(8Ω)
 残留ノイズ  0.17mV

予想では最大出力が40W近く出ると思ったのですが、J116と同じ33Wでした。

K312の RDS(on) が0.9Ω(max) とJ116の2.25Ω(max)より低いので最大出力はJ114並に取れると踏んだのですがここまででした。オーディオ用のK134の方が出力を取れたかも知れませんが、K134の Yfs は1Sでしかないため、超SIT接続にはちょっと不足気味です。TO−3パッケージに拘らなければYfsが大きくて低 RDS(on) のものが選べます。TO−3ならK512が Yfs 3.5、 RDS(on) が0.65Ω(max) と良さそうですが何処にも売っていないようです...。

超SIT接続は期待どおりに動作しているようで、無帰還時の出力インピーダンスはオン・オフ法で10Ωでしたので超SIT接続の rd は約20ΩでほぼK60/J18に近い値を実現出来ました。
大きな Cis (1500PF) もどこ吹く風、超SIT接続の威力か高域カットオフは発振器の目盛りのない回しきった地点で、オシロの波形から読みとると1.25MHzにも達していました。

最初に測定した時は1MHzがカットオフ点だと思っていたのですが、再測定したら発振器の出力が500KHzあたりから減衰しているのに気が付き、実は1MHzまでフラットだったのです。改めてビックリ。
容量負荷にも非常に安定で発振の気配は全くありません。


■ 音質傾向

第一印象は、高S/N、高解像度、MOS-FETのユニットと較べると余韻が綺麗に聞こえます。
何日か聞き込んでみて年が明けて冷静に再評価しても第一印象のままです。
V−FET(SIT)の特徴を受け継ぎ、これもまた全く聞き疲れしない音です。
J18ユニットは無色透明であたかも蒸留水の様な音でしたが、こちらのSuper SITの方が躍動感があり、例えておいしいミネラルウォーターと感じます。
さらに付け加えると他のユニットよりもローエンドが良く延びるし、沢山の楽器が重なっても混濁感がありません。

04年01月、ソフトン主催の新春オフ会にてJ18ユニット、2N3055ユニットと共に数名の方に聞いてもらいましたが、このSuper SITユニットが一番との評価を戴きました。自分でも拙作のいくつかの真空管アンプを凌駕するポテンシャルに驚いています。


■ 雑感

今回はMOS-FETを使いましたが、もっと Yfs の大きいものを使えばさらに rd を小さくすることが出来、SITを超えた超SITとなるでしょう。
または温度補償が必要になりますが、UHC−MOSを使えばさらに強力な超SITが出来そうですし、バイポーラTRでも可能ですし、P−ch MOS-FETでインバーテッド・ダーリントンという手もあります。

しかし、後日インバーテッド・ダーリントン接続での実験ではあまりにgmが大きくなり過ぎ、電源変動に敏感で全く不安定だし、もろに電源ハムが出るので実用には至りませんでした。ですから本ユニットの組み合わせがちょうど良い落としどころなのかも知れません。

相変わらず電源電圧変動によるアイドリング変動補正回路(PSDC)が頓挫したままです。
J18ユニットではVdsよりもVgs変動の影響の方が大きい〈当たり前ですが(^^;)のに対し、こちらはVgsをツェナーで固定しているのでVdsの変動を補正する必要がありますが、補正無しでも案外変動は少なくそのままになってしまっています。


Last update 07-May-2006